2013年11月30日土曜日

182.「不肖・宮嶋の「海上自衛隊ソマリア沖奮戦記」 」宮嶋 茂樹

この方の著作を初めて読みました。独特の文体で読みやすく好感が持てました。

内容は、ソマリア沖での海上自衛隊の活動のレポートです。
正直なところ、ソマリアの海賊については、
先進国に漁場を荒らされた漁師が
内戦に使われた武器をとって、近くを航行するタンカーなどを襲い、
身代金を要求するといった程度しか知りませんでした。

また、自衛隊の派遣といった憲法では認められていない行為に
ついて法解釈により派遣したことについては、正直、自分の意見を
持っていませんでした。

そもそも、ソマリアは、スペインの植民地で後に半分をイギリスに占領され、
大した資源もないので始末に困ったイギリスが独立させ、
追うようにスペインも解放しました。
そのため、政治体制や社会資本は整備されておらず、とても貧しい国です。
海賊発生の原因は、イギリスとスペインの非道な扱いにもあると思います。

武器を携帯できないため、非殺傷兵器である「大音響指向性スピーカシステム」「で海賊を追い払った話や、海賊対策での海自派遣に反対するピースボートを海自が護衛した話など、知らなかった話ばかりです。

94ページと、とても薄い本ですが、内容はとても濃い本でした。
私が触れた情報が少なく、かつ、偏っていたため、
もっと、こういう情報をストックして、深く考えたいです。

2013年11月29日金曜日

181.「55歳からのハローライフ」村上 龍

取り立てて恐ろしいことは起きませんが、希望を見いだせない50代後半の暗澹とした描写が酷く恐ろしいです。
熟年離婚、ホームレス転落、高齢再就職、難病、一人暮らし等50代後半から現実に起こりやすい落とし穴をリアルに体験させます。

二人は、話し方や風体から判断して、間違いなく富裕(主人公)と同類の人種だった。つまり、元それなりの上場会社にいて管理職の経験がある。営業かエンジニアで東京の大学を出て首都圏に住居がある。こなれた標準語を使う。風貌には現役時代の自身の残滓のようなものが刻まれている。
ただ、肩を落として歩くその姿を見ると、周囲にはただの老人に映っているだろう。

「時間かけて自分にできること、やりたいことを必死にまとめたあげくに、差し出される仕事がビルの守衛や清掃というのは悲しくないか。」


一人がそう言うのを聞いて、富裕はやっと現実を把握した。中高年が再就職先を見つけるのは絶望的にむずかしいのだ。


この描写を読んで、まさに企業を辞めたかった場合の10年後の自分の姿だと思いました。

自分も営業職で、その虚しさから退職しましたが、やはり、40年近く営業職や管理職をやっても再就職には役立たたないのかと、悲しくなりました。
威厳を持って60代を生きていくには、自分のお客さんを持って、独立していなければならないと思いました。

主人公達が、暗い状況でもそれを現実を受け入れた時にその現実を新しい世界として見ることができ、微かだが確かな希望を見出すところに救いがありました。

(青字部分は、本書からの引用です。)




2013年11月28日木曜日

180.「イノセントブルー 記憶の旅人」 神永 学

前世を見せることができる才谷梅太郎が現世で悩み苦しむ人達を救います。この名前を見ただけで、ピンと来た人はかなりの歴史通です。

「ソウルメイト」という言葉が出てきますが、これは、飯田史彦さんの著作に出てくる考え方です。つまり、人は何度も生まれ変わり、同じ人達と引き付け合うように共に人生を過ごし、役割を変えながら魂を成長させるというものです。

本書でも、前世を見せることで、現世の悩みは前世に果たせなかった願いであると気付かせたり、現世の悩みから逃げ出すことは前世と同じことの繰り返しだとわからせたりします。

そして、前世の運命に囚われることなく、現世では新しい道を切り開くことができるのだというメッセージが伝えられます。

2013年11月27日水曜日

179.「エリック・ホッファー自伝―構想された真実」 エリック ホッファー

「沖仲仕の哲学者」エリック・ホッファーの自伝にして最後の著作。

労働、読書、思索という最も平凡な行為を積み上げ
哲学という最も非凡な宝石にまで磨きあげました。

7歳で失明し、15歳で突然視力を回復したホッファーは、
再度の失明をおそれ、失明する前にと、朝から晩まで読書に耽ります。

幼少の時に言われた「お前の寿命は40歳まで」という予言を信じこみ、
28歳の時、仕事に失望し、「今死ぬも10年後に死ぬのも何が違うのか」
と服毒自殺を図ります。

その苦しみの中で、本当は生きようと望んでいる自分に気づき、
自殺するのをやめた後、労働者として生きるのではなく、
放浪者として生きる決意をします。

金持ちの農場主が自分の財産を失うことを恐れる姿を見て、
ホッファーは、「自分は安全。季節労働の仕事は必ずあるから。」
と話しました。
持たないゆえ失うことのない安心感、
不安定ゆえ次に移れる安定感といったところでしょうか。

死を予言された40歳から、サンフランシスコの港湾労働者となり、
労働と著作の日々を送ります。
毎日違う職場、違う上司のもとで単純労働しながら、
頭の中では、ずっと思索していました。

60歳で仕事をやめた後は、著作に専念し、80歳過ぎまで行きました。
お金や地位や安定に囚われず、読書に生き、周囲から尊敬されるように
なった姿を尊敬します。

2013年11月26日火曜日

178.「気絶するほど儲かる絶対法則」 石原 明

「物はなぜ売れるのか。それは、いい物だから売れるのでなく、
よさそうだから売れる。」
似ているようで異なっている考え方ですが、実際にそうだと思います。

「営業マンは、実はお客さんと会っていないときにどれくらい情報収集をしたり、
考えたりする時間がとれるかというので決まるのです。」
これは、弁理士にも共通することだと思います。
どれだけ勉強していて、お客さんと会った短い時間の中で
どれだけお客さんを感動させるかが、お客さんから信用を得て
更に仕事をいただけるポイントだと思います。

営業に関して世の中で常識と思われていることを否定し、
本当に効果が上がる方法や考え方を教えてくれる本です。

2013年11月25日月曜日

177.「歴史をつかむ技法」 山本 博文

ちょっとタイトルと合っていない感じがしました。

第1章において、「鎖国」や「幕府」という言葉は当時は使われておらず、後世の歴史家が分類の便宜上名付けたという話や、歴史小説はフィクションが多く、歴史学とは異なり鵜呑みにできないという話がこれまでの思い込みを正してくれます。

しかし、それ以外の部分では、天皇制の歴史などに多くのページが割かれ、本来のテーマである「歴史をつかむ」という技法には殆ど触れられていない
ように感じました。

歴史を俯瞰する方法を期待すると、それに応えるのは難しいが歴史の面白トピックスに触れるにはよい本です。



2013年11月22日金曜日

176.「「これでいい」と心から思える生き方」 野口嘉則

著者が目指す方向がデール・カーネギーやスティーブン・R・コヴィー
のような社会教育者の方へ向かってしまった感じがします。

しかし、本書ではカーネギーが最初に失敗したと語っているのと
同じ轍を踏んでしまっています。
それは、「他人の著書のいい部分を寄せ集めて本を書くこと」。

自らの実体験やフィールドワークから導かれた結論でなく、
他人の著書の引用を使って、自己の主張の根拠としています。
また、例も、A子さん、B郎さんなど具体的でなく、
実話か作り話かが判然としませんでした。

私の心には響かない一冊でした。

2013年11月21日木曜日

175.」ドミノ倒し」 貫井 徳郎

月影市という、全く実在しそうもない場所が舞台。
風景描写や人物描写が少ないためか、星新一の小説を思わせる文体です。

「元カレの殺人容疑を晴らして欲しい」という、亡くなった彼女の妹からの依頼
を引き受けた十村が、月影市でこれまでに起きたいくつもの殺人事件に
巻き込まれていきます。

著者のこれまでの文体と異なるので、新しい分野への挑戦ということでしょう。
ミステリー要素が薄いですが、ユーモア小説としてみれば、悪くないのかもしれません。

2013年11月20日水曜日

174.「インディペンデント・サラリーマン入門 資産1億円なんて簡単 」加藤 隆



入門ということだけあり、複業のメリットが語られています。

会社員でいることのメリット、退職することのデメリット、
独立することのリスクが副業の根拠として記載されています。
その反対のメリットデメリットが記載されていないので、
客観性に欠けるように感じました。

「資産1億円なんて簡単」と、資産の大きさをアピールする場合は、
大抵、不動産事業です。本書もその例に漏れません。
そのため、実際の利益がどれ位あるのかは、わかりません。

また、不動産業はあまり手間がかからないという論調ですが、
実際には、物件探し、資金調達、空き家対策、住居者クレーム等
やることが沢山あります。
本当に利益を挙げていくためには、片手間ではできないと思います。

本書には、具体的な複業のやり方は書かれていません。
「複業」という考え方もありますよという紹介の書です。



2013年11月19日火曜日

173.「たった5人集めれば契約が取れる!顧客獲得セミナー成功法―全国No.1営業マンが初公開! 」遠藤 晃

本書が提案する<新たなセールスプロセス>は、
「集客→セミナー→無料個別相談→有料個別相談→契約→紹介依頼」
というもの。

セミナーを核として、セールスシステムを構築しています。

セミナーの集客目標は、たったの5人。
その理由として、
1. セミナー中に信頼関係を築ける人数は限られている
2. 一時期に個別相談できる人数は限られている
3. 少人数だとビジネスを早く軌道に載せられる
からです。

セミナーといえば、集める人数が多ければ多いほど
見込み客が増えるからよいと思いがちですが、
しっかりとビジネスに繋げるためには、5人でも十分なんですね。

2013年11月18日月曜日

172.「経済学の3つの基本: 経済成長、バブル、競争」根井 雅弘

3つの基本として、経済成長、バブル、競争を取り上げ、
ケインズ、ガルブレイス、ミシャンなどの学説を紹介しています。

薄い本で読みやすいのですが、その反面、説明が簡略なため、
私にはよく理解できませんでした。

理解するためには、原典にあたる必要がありそうです。

2013年11月17日日曜日

171.「90日で商工会議所からよばれる講師になる方法 」東川 仁

「金なし」「資格なし」「経験なし」「人脈なし」だった著者が6年かけて編み出した「商工会議所によぼれる方法」です。

著者が強調するように、「セミナーを行うのは、顧客獲得のため」であり、そのためには、自主セミナー講師ではなく、「呼ばれて講師になるべきだ」そうです。

その内容は実践的で、実行することは決して簡単ではないですが、実行すれば、本当に商工会議所に呼ばれそうです。

2013年11月15日金曜日

170.「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野 圭吾

5つの短編小説が撚り合わさって1つの長編を形取るといった凝った構成。
さらに、1979年と2012年という違う時代も絡まり合って
奇妙な整合性を物語に与えています。

5つの話のいずれもが、心が暖かくなる話です。

ただの雑貨屋の店主である浪屋雄治さんだが、
実に人に対して温かく、心が広い。
そのやさしさが、多くの人を救うところに、心惹かれました。

2013年11月14日木曜日

169.「何があっても一家4人を食わせていくだけのお金を稼ぎたいならスモールビジネスをやるしかない」 中村裕昭

士業について書かれた部分が大変参考になりました。
(以下、青文字が引用部分)

「行政書士の資格がなければ、行政書士としての仕事はできません。
しかし、行政書士としての仕事をしてもお金を十分に稼げない人もいます。
自分が携わるビジネスで大切なことは、お金を稼ぐことです。
それは集客でありセールスです。
自分を飾るための資格を取る暇があったら、マーケティングや
セールスを学び、実践し、お金を生み出す知識を身につけた方が
いいのです。」

その通りだと思います。
私も弁理士の資格を取った後に、中小企業診断士や
弁護士の資格取得を検討しました。
しかし、投資に見合う収益が得られないことと、
複数の高度な専門分野で継続して専門性を磨くことの困難さから、
ダブルライセンスの取得を止めました。

「資格を活かしたビジネスは、マンパワーが必要な
ビジネスモデルでもあります。
行政書士や弁護士は、基本的にはその資格を持った人が
対応する必要があるからです。」

顧客は勤務先より、先生個人で仕事を依頼します。
そうすると、どうしても受けられる仕事の限界点があり、
そこが収益の限界となります。
その上で収益を上げるには、高度な専門分野に特化して高価格にするか、
一般的な分野をマニュアル化して、実務はスタッフに任せ、
薄利多売にするかです。

「顧客をどのように集めるかといった問題や
価格競争に陥りやすい、ライバルが多い、すぐにマネされるなど、
頭ひとつ抜けたと思っても、その優位性はすぐに失われる可能性が
常につきまといます。
また、ネットだけを中心に事業展開すると、実体がわかりにくく、
はじめは受け入れてもらいにくいデメリットもあります。」

士業は装置産業ではないため、マネされやすい業態です。
その中で、顧客から選んでもらえるためには、
パーソナルブランドを高めることと、常に進取の気性を持つことでしょうか。

「集客から収益が上がる仕組みをいかに上手く構築できるかが
成功と失敗の分岐点となります。」

そのなかでも、特に集客の仕組みを作ることが重要なポイントです。

2013年11月13日水曜日

168.「稼ぎが10倍になる「自分」の見せ方・売り出し方」 野呂エイシロウ

サラリーマンとして給与を増やすという内容ではなく、個人事業主として売上を10倍にする方法をアドバイスしています。

具体的な方法は、自分の肩書をはっきりさせた上で、ブログによってネットで有名になるということ。
自分の専門分野について、毎日ブログに読者の役に立つ記事を
3年間に亘って書き続けます。

そうすると、記事が1,000本を超えて武器になります。
ブログを毎日更新して、それをフェイスブックやツイッターといって
SNSツールでお知らせするのが一番いい方法だそうです。

非常に説得力がある内容で、実効性が期待できるので、
僕もやってみようと思います。


2013年11月12日火曜日

167.「プロ弁護士の「心理戦」で人を動かす35の方法」 石井琢磨

交渉に関する35個のアイデアが書かれています。

それぞれが独立した方法で、体系だってはいないので、全てをセットで実行する必要はありません。
自分が気に入った方法だけ実行すればよいです。

チャルディーニの「影響力の武器」が紹介されており、その内容をベースに著者が実行している方法が多いです。

私が気に入った方法は、
「クライアントとの面談時には分厚い条文集を持っていくこと」と
「写真を公開するときには、本棚の前で撮った写真を使うこと」
です。


2013年11月11日月曜日

166.「「友だちいない」は“恥ずかしい”のか」 武長 脩行

著者は「孤独力」というコンセプトを提示しています。
これは、安易に群れず、自分で物事を深く考えて、
自律した人間になったうえで、他人と関係を結ぼうということだと理解しました。

本書で一番印象に残ったのは、エリック・ホッファーという哲学者の話です。
この人は、7歳で母を亡くした上に突然失明しましたが、
15歳の時に奇跡的に回復します。
その後、再失明の恐怖から1日10時間読書したそうです。

学校へは生涯を通じて一度も通うわず、仕事の合間に図書館で
読書にふけりました。あまりの貧しさに28歳のときには、
自殺を図ります。

ある日レストランで出会ったカリフォルニア大学バークレー校
の教授に認められ、臨時の研究員として働きます。
そこで功績を上げた彼は、正式の研究員のポストを与えられますが、
これを断り、65歳まで港湾労働者として働き、
「沖仲仕の哲学者」と呼ばれたそうです。

学校に通わず、読書、思索、著作という独学のみで哲学者となり、
肉体労働で生計を立てて80歳の寿命をまっとうしたホッファーに
感動しました。

2013年11月8日金曜日

165.「冒険に出よう」 安藤 美冬

本自体は、U25という20代前半の若者に多様な働き方を
提示するシリーズ。一流大学から一流企業へ進むことが
働き方の全てではないという趣旨だと思います。

現在の著者は、フリーな働き方をしていて、定職を持たず様々な仕事に
携わっています。その働き方のベースとなっているのは、慶応大学を卒業し、
集英社に就職して、30歳まで勤務しています。
したがって、彼女は一流大学から一流企業へ進み、
その過程で学習する習慣を身につけ、仕事の基本を学び、
慶応大学と集英社というブランドを得ていることを見逃すことはできません。

それぞれの文章が彼女が言語化した教訓でまとめられていますが、
その効果については検証されていないので、鵜呑みにはできません。

特別な専門知識を持たない彼女が成功した要因は、本書を読む限り、
自分の頭で考えること、多くの人と交流したこと、自分情報を大量に
発信したことだと思います。

自分の頭で考えることの基礎となったのが子供の頃にいじめに会ったので、
図書館にこもって読書していたことだと思います。
多感な時期に友達が本だけという状況で多様な考え方に出会い、
ありあまる時間で色々と夢想したことが物事を深く考える習慣に
なったのではないでしょうか。

定職に頼らず縛られない働き方をしている素敵な方だと思いました。

2013年11月7日木曜日

164.「士業のための「生き残り」経営術」東川 仁

期せずして、昨日と同じ著者の本でした。

こちらが2012年5月25日の発行で、
昨日の本が2012年6月8日の発行と、たった1ヶ月違いで2冊を出版したとは
すごいです。

内容には、全く同じことが書かれていることもなく、楽しく読めました。
こちらは、創業時の話で、昨日の本は、事業が軌道に乗ってからの話です。

著者は、新卒して就職した金融機関が突然破綻したので、
独立準備、資格、顧客、ノウハウもなく、230万円の退職金のみで
独立を余儀なくされます。
そして、資金をどんどん減らしていき、企業から2年2ヶ月目に
初めて融資を受け、これをきっかけに2年9ヶ月目頃から食えるようになります。

本書は、その起業時の体験談を基に、融資の受け方や
融資を受けた後の具体的な営業方法(HP作成、名刺作成、紹介、
セミナー実施)について書かれています。

士業が独立するときに何をすれば良いか、指針となる本です。


2013年11月6日水曜日

163.「依頼の絶えないコンサル・士業の 仕事につながる人脈術」東川 仁

コンサルタントと士業に的を絞った、営業のための人脈作りの本。

独立改行の本は、人と直接会って紹介による集客を勧めるタイプと、
ホームページを充実させることによる集客を勧めるタイプがありますが、
これは前者の本です。

「異業種交流会は実益が乏しいのではないか」
「高額セミナーは本当に価格分の価値があるのか」
「名刺交換したとき、何を話せばいいのか」
などの悩みに、的確な回答が記載されています。

タイトル通りのテーマが最後まで一貫しています。
また、見開き2ページで1項目がまとまっているので読みやすいです。
内容も他人の本からの引用がなく、自分の体験を帰納的にまとめています。
気に入ったところはすぐに真似できる実践的な本です。

2013年11月5日火曜日

162.「高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか: 若者たちが今〈大人になる〉とは」乾 彰夫

「18歳の今を生きぬく―高卒1年目の選択」東京都立大学「高卒者の進路動向に関する調査」の続編。

成績中位校のA高校と低位校のB高校の卒業生を卒業後5年間を追ったレポートです。

とても驚いたのは、調査対象者の女性の性的サービス労働での就業が多いことです。それも、A高校ではゼロだったが、B高校では7割に登っています。

その経緯は、就職後1年以内に離職して失業後、
正規雇用で就職できないまま非正規雇用の職を転々とし、5年以内に10回以上の転職を繰り返します。性的サービス労働への従事は、離転職のプロセスの一部で就業目的の第1位は、収入だそうです。

つまり、低位校を卒業した、普通の女の子が高校卒業後の最初の就職につまずくと、その後の再就職に苦しみ、経済的理由から性的サービス労働へ落ちていくという構図です。

また、私自身の周囲の状況から得心がいったのは、現時点では、中国語学習があまり就職に効果が無いことです。20年程前から、「これからは中国語の時代だ」と言われてきたが、2013年時点で、日本企業への就職にプラスに働いていないようです。

中国は、GNP世界第2位の経済大国になりましたが、その内実は、技術やマネジメントは欧米の後追いで、未だ中国発の技術が主流となっていません。
そのため、一般的な中国国民の収入は低く、英語や日本語を学んで、外資企業に就職したいという中国人が多いとのことです。

そのため、日本人が中国企業に採用される条件は中国語よりも技術力が重視されます。日本人が日本企業の現地法人で採用される場合は、現地待遇のため、収入が現地レベルと低額に抑えられます。
その一方、日本人が日本国内で採用される場合は、中国とのビジネスは殆ど英語でおこなわれるため、中国語を活かす仕事は、通訳や翻訳の会社くらいにしかありません。

そうしますと、中国語でビジネスするには、中国が現在の発展を続けたうえで、あと10年以上はかかりそうです。したがって、中国語学習が就職に効果を発揮するのは、まだまだ先と思われます。

結局、本書を読んで感じたのは、若者が安定して就業するためには、大学の上位校か、需要が多い資格が取れる専門学校に進学することが必要です。この観点では、日本の学歴社会はまだまだ継続していると言えるでしょう。

その他には、収入の多少を問わず、自分の好きな分野で起業するこという選択もあります。この観点では、食べていけるようになるまでにはフリータという
就業形態になるでしょうが、うまくいった場合には、一本軸が入った働き方になります。

それ以外には、企業に搾取され翻弄される働き方を
余儀なくされるかもしれないと感じました。



2013年11月1日金曜日

161.「ナリワイをつくる:人生を盗まれない働き方」伊藤 洋志

「ナリワイ」とは、個人レベルではじめられて、自分の時間と健康を
マネーと交換するのではなく、やればやるほど頭と体が鍛えられ、
技が身につく仕事をいうそうです。

書かれている内容は魅力的ですが、実践するとなると集5日の定職
と両立することは困難なので、家族を養っていたり、住宅ローンを
抱えている人には、実現困難です。

しかし、そういった人にも、「今の働き方以外にもナリワイってあるんだ」
と気付かせたり、「今の仕事が人生の全てだ」という思い込みから
解き放したりする効果があります。

また、就活が上手くいかない若者にも、「こうやって生きる方法もあるんだ」
と知ることができれば、追い詰められることもないと思いました。