2014年8月31日日曜日

455.「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」今野 晴貴

近年、話題となっているブラック企業について、その実態を明らかにしています。

本書に出てくるIT企業Y社の社員の追い詰め方は、毛沢東時代に中国共産党のようです。

また、衣料品販売X社の洗脳は、オウム真理教のようです。このX社はグローバル企業とイメージされており、かなり高学歴の大卒が海外勤務を夢見て入社しているとのことです。実際には、入社研修で柔順さを叩きこまれ、地方の店舗で永遠こき使われた挙句、鬱を発症して退社していくそうです。

戦後日本の日本企業では、労働者が職を転々とした。

製造業を中心に企業は新卒を定期採用し、長期に育てる。

新卒の職場を作るため、一斉に人事異動した。

不利な労働環境を我慢してもらうため、終身雇用、年功賃金、厚生年金組合、福利厚生を充実

というように、日本型雇用制度を造り上げました。

しかし、バブル崩壊とその後のデフレにより、
商品価格の低下:利益圧迫

日本型雇用制度の敵対視:終身雇用廃止、成果給導入、厚生年金組合解体、福利厚生の削減

産業構造の変化:製造業から、外食、IT、流通といった労働集約型⇒マニュアル化⇒非熟練化⇒人の価値の低下

正社員の減少:労働組合の弱体化

米国型MBA追随・起業讃美:労働環境は悪くて当たり前という風潮

企業のブラック化
と進んだのではないでしょうか。

そのため、社員ば部品で使い捨て、人格破壊黙認、自殺急増となっています。

これを解消するためには、
新鎖国政策:日本市場を重視し、安全で高品質な製品を高価格で流通させる。
新所得倍増:高価格な日本製品を買えるよう、国民所得を倍増させる。
国家強靭化:公共事業を増やして国土を強靭化するのはもちろん、日本語・科学教育、警察、軍備を強化して強靭な国家を創る。
というのは、どうでしょうか。


2014年8月30日土曜日

454.「学校では絶対に教えてくれない 僕たちの国家」 三橋 貴明

「国家」というものを歴史、文化、制度等といった観点から解説する本です。

日本は、恵まれているゆえに、あまり国家について考えず、国家が提供してくれている恩恵を空気のように当然のこととして捉えているような気がします。

特に、勉強になったのは、国債発行の仕組みと公共事業の現状です。

日本の公共事業は、ピークの98年の約15兆円から12年の約5億円へと激減しているそうです。談合や政治献金という悪いイメージから、「構造改革」や「コンクリートから人へ」によって、目の敵にされたからでしょう。

しかし、笹子トンネル天井板落下事故や広島市の土砂災害など、今こそ公共投資を増やして、社会インフラを整備する時ではないでしょうか。


2014年8月29日金曜日

453.「スリッパの法則 - プロの投資家が教える「伸びる会社・ダメな会社」の見分け方」 藤野 英人

やっぱり、ビジネス書は当てにならないなというのが率直な感想でした。

伸びる会社に見られる法則集という位置づけですが、全てが著者の仮説に過ぎません。

夢を語るホリエモン、従業員を大事にする渡邉美樹、メモをよくとる折口信夫など、今では、その美談が信じられていない人達が絶賛されています。

内容は、ファンドマネージャーが投資をする際のチェックポイント集のようですが、実際には、経営者は、知られたくない実情を簡単に語らないので、その有効性も疑問です。

法人営業をする人が取引先を視る際の、将来性を図るための観点としては、役立つかもしれません。


2014年8月28日木曜日

452.「真実の朝鮮史【1868-2014】」 宮脇淳子、 倉山満

朝鮮戦争の話が特に面白かったです。
これまで、何故、朝鮮戦争において、中国が北朝鮮を支援したのか疑問でした。

ソ連の指示のもと、共産主義の勢力圏を拡げるためかと思ってました。

内実は、毛沢東が邪魔な親日派と内モンゴル軍を皆殺しにし、満州をソ連から奪い取り、北朝鮮を西側との緩衝地帯にするためだという謀略には、恐れいりました。

また、どさくさ紛れに竹島を奪い取った、李承晩は、暴力団を使って政敵を虐殺しまくっており、とんでもない初代大統領です。
こういう人間をトップに置いたアメリカの罪は重いです。

金日成とは、抗日運動における伝説の将軍の名前で、その名で呼ばれた人が何人もいたそうです。諡のようなものでした。
北朝鮮の国家主席であった金日成は、本名を金成桂といい、ソ連が送り込んだ人物で、実は、流暢な朝鮮語を喋れなかったそうです。それが広まらなかった理由は、その事を口にした人間全てが金日成に惨殺されたからです。

架空の従軍慰安婦を問題にする韓国ですが、ベトナムに30万人従軍し、強姦しまくって3万人の混血児を置き去りにしています。この子達をライダイハンと呼び、大きな問題となっています。自らの賠償はどうしたのでしょうか。


2014年8月27日水曜日

451.「空飛ぶ広報室」 有川 浩

航空自衛隊の広報室という、またもや珍しい設定です。

広報室には、報道班と広報班があります。

報道班は、事故があった時などのマスコミ対応を受け持ち、広報班は、イメージアップなどの国民対応を受け持ちます。

自衛隊の意義や実情を国民に理解してもらうための苦労がよく分かりました。

よく知られていない設定を理解してもらうため、50ページ位までは、なかなか読み進むことが難しく、もどかしいです。そこを過ぎると、読むスピードが一気に上がります。

内容がやけに詳しいと思ったら、あとがきにあるように、本書の企画は、鷺坂室長のモデルにもなった航空自衛隊の人からの提案だったそうです。

自衛隊の設立経緯ゆえに、常に偏見と批判の目にさらされてきた自衛隊ですが、世界でもこれほど多くの人命を救った軍隊はないそうです。

東日本大震災でも、松島基地自体が被災しながら、自らの家族を省みず、被災者を救助し続けた姿に感謝の念が絶えませんでした。


2014年8月26日火曜日

450.「成毛眞の超訳・君主論」 成毛眞

超訳というので、君主論の分かりやすい翻訳書かと思いましたが、違いました。

著者が君主論から学んだことを様々な出来事に当てはめて、著者なりに解釈しています。

君主論を学びたい人は、別途、翻訳書を読む必要があります。

本書は、著者自身のマネジメント論です。


2014年8月25日月曜日

449.「「できる人」という幻想―4つの強迫観念を乗り越える」 常見 陽平

「即戦力」「ブローバル人材」「コミュニケーション力」「起業家」という「できる人」になることを強いる4つのキーワードから「若者強迫社会」の実像を探っています。

第5章「起業家は英雄なのか」が飛び抜けて面白かったです。
リクルートの1988年4月の採用が描かれています。約1,000人を採用するために、55,000人の学生を面接し、86億円を使ったとのことです。

僕は、翌年の1989年4月入社で、同期入社が大卒高卒を合わせて約1,000人で、リクルート事件のまっただ中だったので、更に手間と費用がかかったと思います。

その一方で、著者が入社した1997年4月は、同期が120人と約10年後には、大きく減少しています。

元リクルートの起業家に対する批判が的を得ていて、納得してしまいました。著者の次回作は、「リクルートという幻想」だそうです。非常に楽しみです。




2014年8月24日日曜日

448.「バカボンのママはなぜ美人なのか」 柴門 ふみ

漫画家の柴門ふみさんによる嫉妬論。

「人はなぜ、バカボンのママを嫉妬しないのか?」
その答えに嫉妬を克服するヒントがあるとのことですが、ネタバレになるので、詳しくは、本書をご覧ください。

「クラスの男子が一人でも「あの子が可愛い」というと、クラス全員の男子が「可愛い」といい始めて、可愛いことになってしまう。」
その例として、新田恵利さんが挙げられていましたが、妙に納得してしまいました。

著者は、高校生の頃、狭い町で暮らしていたため、町中の人に著者の片思いとCランクの市立高校に通っていたことを知られていたそうです。俄には信じられない話ですが、その状況が著者を受験勉強に向かわせ、大学受験に成功します。

自分や友人の出来事から、嫉妬について深く考察しているため、借り物ではない、自身の言葉で語られる内容に説得力があります。

「女は「幸せ」に嫉妬し、男は「成功」に嫉妬する」とは至言です。
クスっとしながら、楽しく読めました。

これほど嫉妬している著者はかなり嫉妬心が強いと感じました。その根深い嫉妬心が著者の成功の原動力でしょうか。


2014年8月23日土曜日

447.「ひきこもり500人のドアを開けた! 精神科医・水野昭夫の「往診家族療法」37年の記録」 宮 淑子

まずは、ひきこもりの歴史が語られます。

1950年代 学校恐怖症
1960年代 リストカットがアメリカで流行
1970年代 リストカットが日本でも流行
1980年代 「ひきこもり」という名詞の出現
       「おたく」の流行(83年)
       「フリーター」が一般化(87年)
1990年代 「不登校」という言い方が定着
2000年代 「ひきこもり」が問題化
       「パーソナリティ障害」が問題化
       「ニート」が流行(2004)
       「ワーキング・プア」が問題化(2006年)

そして、水野医師が「往診家族療法」を確立する経緯が説明されます。

ひきこもりは、家庭で、学校社会で、職場で生じる様々なトラブルから、とりあえず身を守るために防衛する行為であるという「自己防衛説」を元に、ひきこもりへの対応が考えられています。

そして、通院や投薬という一般的な治療ではなく、往診、一人暮らし、就業という方法で多くのひきこもりの治療に効果を挙げているそうです。


2014年8月22日金曜日

446.「嘘だらけの日韓近現代史」 倉山 満

韓国政府検定教科書の記載を挙げて、それに反論していくという手法が面白く、よく理解できました。

大院君、閔妃の権力闘争から、日清戦争、日露戦争に巻き込まれていく様がよくわかりました。

また、当時の朝鮮には、文化、資源、資産等なかったものの、ロシア、清と日本の間にあるという地理的条件だけで日本が介入せざるを得なかったというのが残念です。

アメリカは、そういったことに関心がなかったと思いますが、朝鮮戦争でその地政学的重要性に気付いたのではないでしょうか。

サッカー・ワールドカップの日韓共同開催ですが、当時、共同開催の不自然さにその理由が分かりませんでした。

本書では、竹下登が金泳三に持ちかけたと明かされています。事実なら全くもって売国奴としか思えません。政治的意義に比べれば、ワールドカップの単独開催など意味のないことと考えたのでしょうか。


2014年8月21日木曜日

445.「弁護士が教える絶対負けない反論術」 上野 勝

様々な反論の方法が書かれています。
全てではなく、1つか2つでも実行できれば有益だと思います。

私は、「ことわざの活用」と「例外の普遍化」が参考になりました。

その一方で、著者自身が編み出した方法が少ないのではないかと感じました。

また、故事を例に取ることが多く、著者がかなりの読書家であることが伺えますが、参考文献名が示されないため、信憑性には欠けます。

他者からの引用であれば、黙っていて自分の発案と思わせるより、参考文献名を挙げたほうが、誠実と思われ、かえって信頼性が高まるのではないでしょうか。


2014年8月20日水曜日

444.「月は怒らない」 垣根 涼介

書き出しの彰の話の感じから、著者の「ヒートアイランド」シリーズに繋がる、バイオレンス小説かと思いきや、次の弘樹の話で、「アレッ?」となり、和田の話で、「どんな話だ、これは?」という感じになりました。

舞台は吉祥寺。
知っている街なので、とてもイメージが湧きやすかったです。


「人それぞれ、自分の人生は自分ものでしかない。裏を返せば、そういう意味で、誰のせいにもできないものだ。」
「人間は、未来に希望を失ったときに人間ではなくなる。」
など、それぞれの人物が人生観を問いかけ、読み手は自分の人生が引っかかってしまって、その問いかけを考えてしまいます。

登場人物や、設定が実に趣深く、普通ではない設定が普通の人生を問い詰める感じがしました。

「月は怒らない」という意味不明なタイトルが、最後に深い人生観を表していることに気が付き、鳥肌がたちました。小説にして哲学書のようでした。


2014年8月19日火曜日

443.「ダメ出しの力 - 職場から友人・知人、夫婦関係まで」 繁桝 江里

読みにくくはありませんが、読んでも頭に内容が残りませんでした。

調査データは多いのですが、個別の例がないので、学生のレポートを読んでいるようです。

インタビューの総数が少ないので、結果に信憑性がありません。

書かれていることの根拠が乏しい上、著者自身が
「そのまま取り入れるというよりは、「応用する」気持ちを持って下さい」と及び腰なので、ますます単なる仮説または、思いつきの枠を出ません。

最近の新書は面白いものが多くなってきていますが、そうなる前の昔の新書という感じでしょうか。

本書自体が「ダメ出し」される内容かもしれません。


2014年8月18日月曜日

442.「ヒア・カムズ・ザ・サン」 有川 浩

主人公の真也は、30歳の雑誌編集者です。
彼は、「余分に」察してしまう能力を持つゆえ、感情の量が圧倒的に多い作家から信頼を得ています。

ある企画で大成功したハリウッド映画の脚本家、HALが日本人であることを知り、彼をインタビューすることになります。HALは実は、真也の同僚のカオルの父親なのですが、カオルから聞いた父の話とは、全く別の真実がありました。

作家の気性は著者自身のことで、編集者の対応は著者が日頃感じていることと考えると生々しかったです。その日常を舞台として、その上に別の話を組み上げているのが見事です。組み上げ方も細やかな情念を念入りに編んでいるので物語の奥行きが深いです。

何故、ここまで深い話を毎作書けるのか、疑問に思うほど、心が動きました。


2014年8月17日日曜日

441.「「ひきこもり」だった僕から」 上山 和樹

かなり幼い頃からの記憶があることから、地頭が良いことがわかります。子供時代の事を克明に記載できることから、過去のことを良く記憶しているタイプの著者です。

自己の内面を深く掘り下げているので日記を付けているのではとないかという気がしまいたが、案の定、ノート200冊以上も日記を付けていました。

色々と考えすぎ、悩み過ぎて働けなくなってしまいましたが、見方を変えると、そういう姿が実は、昔の哲学者ではないかと思いました。

ひきこもりで、仕事にも就けない著者でしたが、その経験がひきこもりの親と子の翻訳者や、ひきこもり専門の家庭教師という誰にもなれない役割を生んでいるので、人生に無駄なことはないと感じました。

ひきこもりの人は、実は、性的事柄に一番苦しむそうです。逆に言えば、性的事柄で光が見えてくれば、事態は劇的に変化するかもしれないという示唆は、新しい解決策となるかもしれません。



2014年8月16日土曜日

440.「論より詭弁 反論理的思考のすすめ」香西 秀信

同じ内容を順序を入れ替えて言うこと、
同じ内容を表現を変えて言うこと、
無関係な内容を接続することで論拠とすること、
などの詭弁のテクニックが紹介されています。

「○○という言葉を定義せよ。」
「あの下らない本を読んだのか?」
などと、問い詰められたときに切り返す言葉が実践的だと思いました。




2014年8月15日金曜日

439.「know」 野崎まど


2081年の古都・京都に風雅さを溶けこませた高度情報化社会が舞台です。

人類は、あらゆる場所に「情報材」を配合し、そこからデータを収集するために、人類は、頭に電子葉を移植します。

そして、人類は、大量のデータを収集できるようになります。自分が「実際に知っていること」と「ネットで調べられること」の区別がつかなくなり、両者を併せて「知っている」と知覚するようになります。
そして、人間はアクセスできる情報に階層が設けられ、情報により人種差別が行われます。

天才科学者、道終・常イチによって創られ、40年が経過した世界に、電子葉を遥かに上回る解析能力を持つ量子葉を移植された道終・知ルが放たれます。そして、道終・常イチの最後の教え子、御野・連レルと知ルの、世界が変わる最後の4日間が始まります。

非常に独創的な世界観だと思いました。
著者の情報処理に関する知識量も膨大です。難しいデーマながら、とても理解しやすく、読み易いです。とても楽しめました。




2014年8月14日木曜日

438.「増税と政局・暗闘50年史」倉山満

著者は、膨大な資料から関連性を見出し、歴史像を構築していくことに長けています。

過去の書籍で、独特な歴史観により通説を覆し、新しい観点を与えてくれました。

本書でも、その手法を駆使していますが、テーマが現代であるため、公文書等の資料が乏しく、雑誌や人からの情報が多く取り入れられています。

そのため、いつもより、信憑性が薄くなっているように感じました。

2013年に立腹する出来事があったらしく、その怒りが随所にあらわれており、多少、暴走の感も否めません。その部分の記載により、訴訟を提起されています。

情報源の真偽は不明ですが、日銀、財務省、内閣法制局、政府の関係や暗闘を垣間見ることができ、興味深かったです。


2014年8月13日水曜日

437.「氷菓 」 米澤 穂信

高校で起こる様々な謎を古典部に入部した奉太郎が解き明かします。

しかし、謎解きがメインテーマではなく、33年前に古典部の文集に「氷菓」というタイトルを残した関谷の無念さが徐々に解き明かされます。


「氷菓」に託された関谷のメッセージとは、何であったか、そのメッセージが心に残ります。

奉太郎を古典部に入部させた姉・供恵の愛情が物語に深みを与えています。




2014年8月12日火曜日

436.「日韓「禁断の歴史」 」金 完燮

韓国人の著者により書かれた日韓の歴史書です。

韓国籍でありながら、従軍慰安婦問題を否定し、安重根を英雄とする韓国の風潮を非難し、閔妃をジャンヌ・ダルクとみなす反日洗脳教育を批判しています。

伊藤博文の日本と韓国に対する功績が書かれており、自分自身、伊藤公について不勉強であったことに気付きました。

また、北朝鮮の脅威を再認識し、将来起こりかねない、第2次朝鮮戦争に日本はどう対処すべきか、考える必要があると思いました。



2014年8月11日月曜日

435.「ぼくは勉強ができない」 山田 詠美

普通と違うことを権威で統括する組織。学校はその最たるものではないでしょうか。

教師も一人の未熟な人間でありながら、その未熟さを隠すために”先生”という尊称で呼ばせて、子供に服従を要求します。

自分で上手く説明できないことをごまかすために、「それが普通だ」と押し切ろうとします。生徒達は、成績、停学、進路などを盾に取られているために、その「普通」に従い、疑問を持ちません。

主人公の秀美は、自分の感性を重視し、その「普通」を「つまらない」と言い切ってしまうため、教師から睨まれます。彼の発言、行動をクラスメイトは受入れず、最初は仲間に入れませんが、内心は自分達も同意し、彼に好感を抱いています。

「普通」に疑問を抱かない社会と、自分の感性で生きようとする子供が遭遇する日常的出来事に一服の開放感を感じました。


2014年8月10日日曜日

434.「ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護」 池上 正樹

M君というので、高校生位の話かと思って読み始めましたが、驚いたことに45歳男性の話でした。彼は、70歳の母と二人暮しでした。ひきこもりは、非常に高齢化が進んでいます。

いじめと父親のネグレクトがM君の精神を破壊しました。

ひきこもりの人の精神状況がよく描かれています。興奮と失望が交錯し、突如パニック状態に陥ります。

少し良くなったかと思うと前より悪くなるなど、全く順調に回復しません。周囲はM君に振り回されます。

M君は生活保護を受けて、徐々に生活を立て直していきます。長引くデフレと生活保護の不正受給により、本当に必要な人が保護を受けられなかったり、減額されていきますが、生活保護は本当に大事な制度だとおもいます。

皆が平均して豊かな、一億総中流が実はやさしい社会のように思いました。


2014年8月9日土曜日

433.「日本人のための「集団的自衛権」入門」 石破 茂

第一章の入門編は、割りと中立的立場で集団的自衛権を説明しているように思いました。

第二章の対話篇は、偏った意見に思います。
集団的自衛権の要否について、個別的自衛権に属するような問題点で集団的自衛権の必要性を説いたり、友達が目の前てヤクザに殴られているのに助けないのかという、似ているようで異なる事例に落としこんだりして、ミスリードを招いているように思いました。

私の感想では、現状でも、日本は国際法上の権利として、個別的自衛権も集団自衛権を保有していると理解しました。

しかし、憲法9条1項の「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」から、個別的自衛権は行使できるが、集団的自衛権は行使できないと理解しました。

なぜなら、自国が攻撃された場合は、「国際紛争」を超えた国家存亡の危機であり、同盟国が攻撃された場合は、「国際紛争」の一つと考えたからです。


2014年8月8日金曜日

432.「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」 カレン・フェラン

とても面白かったです。
私自身、かつて信じていた、「競争戦略」「選択と集中」「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」などが、実は殆ど効果が無いということが分かりました。

説明しやすく、納得させやすいために広く普及したということでしょうか。

「なぜビジネス書は間違うのか」という本で、「ビジョナリー・カンパニー」という本で紹介されていた企業の殆どが10年後には輝きを失っていたことが指摘されていました。

コンサルタントは、クライアントの従業員を「資産」として扱い、監視、評価、標準化、最適化して、職場から人間性を奪い、不幸に陥れると思いました。

コンサルティング会社を入れると、書類ばかり残り、従業員の考える力を奪ってしまい、経営戦略は企業買収しか考えられなくそうです。

R社は、創業者が去った後、M社のコンサルティングを受けていたという噂がありました。その時期から社内が急速に殺伐としていった気がします。今、R社は株式公開の予定ですが、その目的は企業買収の資金だそうです。考える力は健在でしょうか。


2014年8月7日木曜日

431.「完全教祖マニュアル」架神 恭介、 辰巳 一世

ゼロから宗教を立ち上げ、教団の教祖になるためのマニュアルです。

教義の定め方から、信徒の集め方まで非常に詳しく書かれています。

もちろん、真剣に新興宗教を作るという目的ではなく、既存の伝統宗教の成立過程や、新興宗教の神秘性のタネを暴露しています。


  • 宗教の目的は人々をハッピーにすること、
  • 宗教に大切なのは「半社会性」、
  • 教義は簡略化する、

など、宗教の秘密が分かり易く語られ、非常に面白いです。


2014年8月6日水曜日

430.「勝っても負けても 41歳からの哲学」 池田 晶子

週刊新潮に連載されていたコラムを集めた書籍です。

著者が日常で触れた出来事に、哲学者という観点から考察を深めています。

文中にあるように、著者はパソコンを使用しないし、歴史も深く調べません。テレビや週刊誌で知った情報に基いて深く内省していきます。
そのため、一次情報が正しくないと感じることも多くあります。

しかし、著者自身は、事実よりも思索が重要と考えているようで、事実には拘りません。

哲学というのものそういうものかもしれません。考えることに多くの時間をかければ、調べる時間は自ずから削られていくでしょう。

「哲学とは、日常に風穴を開ける唐突な思考」と定義するだけあり、自分では当然と考えていたことに気付きを与えてくれました。


2014年8月5日火曜日

429.「儚い羊たちの祝宴」 米澤 穂信

昭和初期を思わせるレトロな文体が独特の気味悪さを醸し出しています。
ミステリーとホラーが融合したような5つの短編からなります。

殺人者にはいずれも良心というものが欠落しており、淡々と語る語り口に狂気を感じます。

作中、絞殺のうえ、首を切り、手首を切り落とすという、佐世保女子高生殺人事件を彷彿とさせる殺害方法がでてきます。この殺人者も人を殺すことにためらいも罪悪感もありません。

小説中の不気味さが現実社会に滲み出しているような感覚に囚われました。



2014年8月4日月曜日

428.「マスコミが絶対に伝えない 「原発ゼロ」の真実」 三橋 貴明

福島原発事故の後、原子力発電に対して否定的になりました。
「そもそも人命が第一だし、原子力発電が安いといっても、事故の賠償金を払っては火力発電と変わらない。そして、原子力発電所をすべて止めても、火力発電で実際、日本の電力需要は賄えているではないか。」と、思っていました。

しかし、248.「文系のためのエネルギー入門」 リチャード・A・ムラーを読んでその考えが変わりました。現状では原子力がエネルギー効率が飛び抜けていいという現実があります。

そして、本書で経済的にも安全保障上でも、現時点で原子力発電に代替できるエネルギーが見当たりません。
1kwhあたりの発電コストは、原子力が8.9円(福島原発の賠償金込み)に対して、石油火力発電が35.5円と約4倍です。

そして、石油輸入に伴い、原油価格高騰、貿易赤字拡大、エネルギー供給の不安定化、中東紛争への介入、協同的自衛権の容認という問題を引き起こしています。

大東亜戦争の原因の1つに、エネルギー共有問題がありました。国家的危機を防ぐためにも、原子力発電を注意深く利用し、早期に代替エネルギーを開発することが必要だと思いました。


2014年8月3日日曜日

427.「呆韓論」 室谷克実

2013年12月の出版であり、2012年と2013年に韓国で起きた事件を中心に韓国の近況を解説しています。

どの話もとても面白いです。
特に、朴槿恵大統領の話は面白いを通り越して、呆れます。

また、「日本の左翼は、マルクス主義の惨敗(ソ連・東欧ブロックの崩壊)を見るや、運動エネルギーを、環境、原発、沖縄、韓国などの方面に置き換えた。そうした意味で、慰安婦問題とは、日本国内での「理念戦争」なのだ。」という見解は、非常に腑に落ちました。

2014年8月2日土曜日

426.「「ひきこもり」救出マニュアル〈実践編〉」 斎藤 環

2002年度版の「ひきこもり」救出マニュアルを理論編と実践編に分冊した、実践編です。

Q&A方式で書かれており、質問内容は非常に現実的です。
また、解答も多くの実体験から得られた実用的なものばかりです。

対応しきれない行動の裏に隠された心理も説明しており、とても勉強になります。

2014年8月1日金曜日

425.「人狼ゲーム」川上 亮

10人の高校生が拉致され、人狼ゲームを現実にさせられます。

人狼ゲームとは、ヨーロッパ発祥の伝統的パーティゲームとその亜種の総称です。

日本では「汝は人狼なりや?」という名前でも普及しています。

〈ゲームの概要〉
1 村の中には村人に扮した人狼が混ざっている。
2 人狼は夜になると一人ずつ村人を殺す。
3 昼は全員で相談し、人狼だと思う相手を多数決で一人選び、処刑する。
4 すべての人狼を処刑すれば村人の勝利。すべての村人を食べつくせば人狼の勝利。

閉鎖された空間で拉致された人間達がゲームのルールに従い殺しあうというパターンは多いですね。
本書もそのパターン。

設定にあまり目新しさはありませんでした。読みやすくてすぐ読めました。

結末も面白かったですが、少し「王様ゲーム」に似てたかな?