2015年4月30日木曜日

629.「93番目のキミ」 山田 悠介

大学生の也太は、ロボットオタク。シリウス自動車が発売したスマートロボットⅡを祖母にねだって買ってもらいます。

スマロボⅡは、「相棒アプリ」をダウンロードすることで人間のように感情を持ち、学習能力を備えます。也太は、スマロボⅡに相棒アプリをダウンロードし「シロ」と名付け、次々とつまらないことをさせて行きますが、ある姉弟と出会ったことで変化が・・・

也太は本当に軽薄で無責任な大学生で読んでいて、腹が立ってきます。お気楽な大学生でこれが普通なのかもしれないと思いました。感情を持ったロボットとの生活というのもありがちなプロットです。ところが、物語は急に暗転します。

也太は「シロ」を通して様々な人と出会うことで、物の見方や人との接し方が変わっていきます。心の成長のプロセスが描かれ、何だかホッとしました。


2015年4月28日火曜日

628.「小さな会社・お店のための 値上げの技術」 辻井啓作

値上げの技術自体の説明もさることながら、まず、値上げに対する不安感や罪悪感を取り除くことに多くのページが割かれています。確かに、これがあっては、いくら値上げの方法論を学んでも、実行すことに抵抗がありますね。

「特に不必要な値引きがよく見られるのがBtoB、つまり、売り先が個人でなく会社の場合です。」

確かににその通りです。実際には、法人の購買担当者は自分のお金で買うわけではないので、個人と比べて値引きに切羽詰まっているわけではありません。しかし、営業担当者は、要求されてもいないのに自ら値引きを提案してしまうことがあります。

「このような不必要な値引きがどうして行われるのでしょうか。それは、担当者の自信のなさが原因です。自分の扱う商品やサービスに自信がなく、かつ自分自身にも自信が持てないと、値引きで相手に媚びるしかなくなってしまうのです。」

まさに、核心をついています。これが大きな原因でしょう。

自分自身、提供するサービスの価値を上げて、値上げしていきたいと思いました。また、自分のサービスを他者と比較して、上回っていると感じたものについて、早速、値上げした見積りを出しました。




2015年4月27日月曜日

627.「放射線医が語る被ばくと発がんの真実」 中川 恵一

著者は、東大病院の放射線医です。

著者によると被ばくした場合、発がん以外の健康被害はないそうです。そして、100ミリシーベルト以下の被ばくで発がんの増加は確認されていないとのことです。

また、放射性物質は水銀とは異なり、代謝や排泄で体外に排出されます。この点、私は体内に蓄積されるものとと勘違いしていました。

つまり、100ミリシーベルト以上の放射線が発生した場合に、100ミリシーベルト以下に半減するまで回避できれば、放射線による発がんの可能性は低いとのことです。

チェルノブイリなどでも、被ばくでがんの増加が認められたのは、唯一、小児甲状腺がんだけだったそうです。その原因は、ヨウ素で高濃度に汚染された牛乳を飲み、1万ミリシーベルト以上の線量を甲状腺に浴びたからです。

福島では事故直後から牛乳などの食品に対する規制が行われました。ヨウ素は半減期が8日と短いので、最大被ばく量は、35ミリシーベルトに留まりました。

専門家から見た被ばくと発がんの因果関係は大変参考になりました。内容に反論もあると思いますが、この内容を一つの考え方として反対論も読んでみたいと思います。



2015年4月24日金曜日

626.「テミスの剣」 中山 七里

昭和59年、埼玉県の浦和インター近くの不動産屋で金庫から現金が盗まれ、夫婦が殺害されました。

容疑者として、25歳無職の楠木が逮捕され、厳しい取り調べの末、自白しますが、裁判では一転して無罪を主張します。しかし、死刑が確定し、楠木は刑務所で自殺してしまいます。

平成元年、別件で逮捕された迫水が浦和の事件を自白し、楠木が冤罪であることが明らかになります。冤罪事件により、多くの人間が粛清されます。

さらに平成24年に迫水が出所し、解決したはずの28年前の事件の真相が明らかになっていきます。

法の世界の理不尽さを明示しながら、正義とは何か、人は組織の中でどう正義と対峙するのかを問いかける深い作品です。


2015年4月23日木曜日

625.「偏差値40の受験生が3か月で一流大学に合格する本」 松原 好之、 倉山 満

本書でいうところの一流大学とは、具体的には中央大学文学部のことです。

著者によれば、偏差値40でも12月から頑張れば中大文学部に入れるとのことです。

そして、現在の日本では、どの大学のどの学部に入っても、学問の追求という面ではどこも代わり映えしないので、何学部でもいいからネームバリューのある大学に入るのがよい選択とのことです。

そこでまず、中大文学部に入って、その後の4年間で熱中できるものを探しましょうということです。身も蓋も無いのですが、納得できます。

そのためには、大学受験に対して、大戦略、戦略、作戦術、戦術を立てて、それに基づいて行動するというのが本書の主張です。


2015年4月22日水曜日

624.「ネットがつながらなかったので仕方なく本を1000冊読んで考えた そしたら意外に役立った」 堀江 貴文

長野刑務所に収監されたホリエモンは、それまで本をそれほど読んでいませんでしたが、「強制情弱状態」を脱出するために読書を始めました。

2年6ヶ月で読んだ本は延べ1,000冊。僕が目指している冊数と同じだったので手にしました。だけど、マンガをカウントしていることと、本当に1,000冊読んだ証拠がないことに疑問を持ちました。

著者が気に入った本を紹介していますが、僕が読んだことがある本は数冊しかありませんでした。対談でHONZを主催している成毛眞さんも、かぶっているものが少ないと言っていたので、独特な選び方をしているのでしょう。

全体としては、理系のノンフィクションが多いという印象でした。著者も理系の本が好きと述べています。

こういった本を読みながら、ビジネスモデルを考えるのが習慣とのことで、さすがに面白い本の読み方でした。


2015年4月21日火曜日

623.「謝るなら、いつでもおいで」 川名 壮志

2003年に起きた佐世保小6女児同級生殺害事件のレポート。当時11歳だった加害者ももう、成人して、普通の生活を送っています。

タイトルは、被害少女の兄の言葉です。兄は苦しみながらもこの言葉の心境にたどり着きました。出版当時は、まだ、加害少女からの謝罪はなかったようです。

著者は、被害者の父親である毎日新聞佐世保支局長の直属の部下です。被害者と親しい者という立場と新聞記者という立場の狭間で動揺しながらも、報道せざるを得なかった心情が赤裸々に描かれています。

加害少女の殺害動機は複数で交換していた日記で加害少女から記載を窘められたことをキッカケにエスカレートしたようです。当時の加害少女の様子から自分の行いを反省しているかわかりませんでした。人を殺めた人間は反省しないのではないかと思います。そういった人間性だから殺めることに躊躇がなかったとも言えます。

被害少女の父は、妻を闘病の末に亡くし、娘を友人に殺されました。その影響から高校に入ったばかりの息子も通学できなくなり退学を余儀なくされました。その心情を思うと胸が押しつぶされるようです。


2015年4月20日月曜日

622.「やむなく副業を始める人が読む本」 関 行宏

「仕事の面白さと副収入は反比例する」という著者の持論は至言。体験から得られた実感でしょう。副業を選ぶ時の指針になります。

「副収入をすぐに得たい場合は、アルバイトや派遣のように、始めやすく、しかも週単位あるいは月単位で給料が支払われる仕事が適当」というのも、現実的なアドバイスです。やりたい副業で収入が得られるようになるには時間がかかるからです。

「平日夜間のアルバイトは体にこたえます。ボロボロになってしまわないように、働く曜日を決めるなどしてセーブしましょう」というのも、よいアドバイスです。仕事帰りに副業して体調を崩しては本業に悪影響を与え、本末転倒です。

仕事の見つけ方から税金対策まで、副業を考えている人に幅広いアドバイスを与えてくれる良書です。


2015年4月17日金曜日

621.「1964年の東京オリンピック開催を情熱で実現した人 フレッド和田勇」松岡 節、 さかい しん

和田勇さんは、1907年にアメリカで生まれました。12歳からシアトルの農場で働き、20歳で自分の青果店を3店経営するほど成功します。

しかし、34歳の時、日米が開戦し、和田さんは強制収容所に収容されて荒野を耕すことになります。

終戦後は、ロサンゼルスに移り住み生活も安定していきました。全米水泳選手権に参加する日本選手団の宿泊先がなかったため、和田さんは自宅を提供して援助もしました。日本人選手は、その大会で大活躍し、「フジヤマのトビウオ」と賞賛されました。

全米水泳選手権から10年後、東京都知事と総理大臣からオリンピックの東京への招致について協力を要請されます。全米水泳選手権の日本人選手の活躍で日本人が勇気づけられたのを知った和田さんは、東京オリンピックで日本を元気づけようと要請に応じます。

和田さんは、自費でメキシコ、パナマなど中南米9カ国のオリンピック委員会を歴訪し、招致をアピールしました。そして、ミュンヘンでの国際オリンピック委員会の総会にも参加し、東京オリンピック開催の決定を聞くことになりました。

和田さんの尽力もあり、1964年にアジアで初のオリンピックが終戦から17年しか経っていない敗戦国の日本で開かれました。

オリンピックが戦後日本の復興に与えた影響は非常に大きいと思います。市井の人の私利を顧みない奉仕の姿に胸を打たれました。


2015年4月16日木曜日

620.「仲良く自滅する中国と韓国: 暴走と崩壊が止まらない! 」 宮崎 正弘、 室谷 克実

中国問題の専門家である宮崎 正弘と、 韓国問題の専門家である室谷 克実の対談本です。このお二方の知識と記憶力は物凄いです。

本書のなかで特に驚いたのは、
「中国での裁判官のなかで大学を出ているのは、おそらく6%くらいです。地方に行ったら、小学校を出ていないようなのが裁判官になっていますから、いくらでも買収がきくでしょう。」
という記載です。

小学校も出ていないのに裁判官になれるが信じられない反面、文化大革命で知識者層を排除したから、党の重要人物であれば有り得るかなとも思いました。法律を専門的に勉強などしていないのだから、法治国家として対処できず人治国家になるのも当然でしょう。

しかし、私が普段接している中国の弁護士や弁理士は皆高学歴で、皆さん立派な人なので疑問に思いました。本書はこう続きます。
「信じられないかもしれませんが、中国でまともな弁護士といえば、おそらく多国籍企業の顧問と特許関係の人だけです。これは、国内処理とは違って国際的な衝突ですから、そちらには優秀な人がいます。」

これで、知財に優秀な人が多い理由が分かりました。




2015年4月15日水曜日

619.「イスラーム国の衝撃」 池内 恵

ゼロ・ダーク・サーティでアメリカがパキスタンに無断で潜入し、ビン・ラディンを殺害したことについて、他国でのこういった行為に疑問を感じていました。

この本によると、パキスタンやイエメンのようにアメリカに表面上は賛意を示しているが、実際には敵対する組織に内通している場合、アメリカはテロ支援国家と認定できません。

そういうときには、アメリカは情報漏洩を避けるため、相手政府に情報を与えず、許可を得ないまま、特殊部隊が急襲するそうです。これであの映画の意味が分かりました。

中東では、他の宗教を敵対するだけではなく、イスラム教の宗派、部族、地域の違いで争いが生じ、周辺国がその組織に資金や武器を供与することで代理戦争化しました。その無秩序状態にISILが潜り込みました。

イスラム教徒がテロを繰り返すのは、その教義にジハードの義務があるからです。これは解釈により、テロが正当化されてしまいます。そうすると、イスラム教が存在する限り、テロがなくならないことになります。



2015年4月14日火曜日

618.「TOEICじゃない、必要なのは経済常識を身につけることだ! 」 上念 司

どんなに英語を勉強して、人気企業に入っても、10年後にはその企業が没落しているかもしれません。だから、経済学を学び、経済の仕組みを知り、正しい選択をしようという内容です。

これは著者自身が中央大学を卒業後、親のすすめるままに当時就職人気ランキング10位以内に位置してた日本長期信用銀行に入校したが、長銀はのちに破綻した経験によるものです。

学習のやり方や、学んだことの活かし方までは書かれていません。自分で考えろということでしょうか。経済学の最高峰である東京大学を出て、経済学を極めて経済官僚や日銀総裁になった人達ですら、著者に批判される状況なので、経済学を学ぶことは難しそうです。

経済学を学ぼうと言いますが、著者レベルまで理解するのは至難の技です。気に入った著者を見つけてその人のフォローをするだけでも充分勉強になるものと思います。


2015年4月13日月曜日

617.「日本に殺されず幸せに生きる方法」 谷本真由美

かなり偏った主張の本だと思いました。

確かに日本には、「過労死」が存在しその数は決して少なくはないと思いますが、それを日本の労働環境一般に普遍化するのは言い過ぎだと思います。

介護事業は、お金をかけても老人が新たな利益を生み出すことはないから、「成長産業」ではないとのことですが、老人が新たな収益を産まなくても、そこで働く人たちの実質賃金が上昇すれば、内需が拡大します。

日本はイギリスに学べと言いますが、サッチャー首相の頃と現在の日本は状況が異なります。当時のイギリスは、大きすぎる政府、生産性の低さなどによるインフレでした。現在の日本は、公務員の数は先進国の中で少ない部類ですし、生産性が高いことによりデフレとなっています。

この状態で、イギリスを真似したら、さらにデフレが進行して、ますます賃金格差が広がります。

また、イギリスは日本のように高齢化社会が進んでいないと自慢しますが、生活習慣や社会保障不足で、日本より平均寿命が短いだけではないでしょうか。

著者の主張は、単なるグローバリズム礼賛に感じました。


2015年4月10日金曜日

616.「機龍警察 自爆条項〈下〉」月村了衛

IRAの過激分子IRFに志願したライザは、シリアのテロリスト要請キャンプで訓練を受けます(こんなキャンプ実際にあるのかな?)。実践さながらの訓練で訓練生が次々死亡していくなか、ライザは頭角を表します。

ライザは、ダブリンに戻った後、IRFの指導者キリアンの懐刀として、キリアンの敵対者を次々と暗殺していくうちに、「死神」と称されるようになります。しかし、悲劇が起こり、ライザはIRFから逃亡します。

逃亡の果て、日本警察の傭兵となったライザは、キリアンが企てるイギリス高官暗殺テロを阻止すべく、キリアンと対峙します。しかし、キリアンの本当の目的は別のところにありました。

憎しみが生むテロの連鎖、キリアンと沖津の策士同士のせめぎ合いが激しく交錯します。東京を舞台としたテロ戦は、その可能性や危険性を予感させます。重厚かつ深淵なミステリ小説です。


2015年4月9日木曜日

615.「キレイなお札から使いなさい!」 内藤誼人

お金持ちがお金を使う時に、きれいなお札から使うという話をキッカケに書かれた、お金持ちの習慣について書かれた本です。

きれいなお札から使う理由は簡単で、汚れたお札をもらって嬉しい人はいないからです。それは引いては相手の立場に立って考えているということに繋がります。

全体として言っていることは、宝くじや株を追いかけず、自分の能力に投資して仕事に熱中し、カードは使わず、余計なものは買わずにお金を貯めるということです。

至って当然と思えることですが、株や不動産での儲け話に心揺らいだり、今回だけはとカードを使ったりと、この基本を外しがちです。今一度、基本に返って仕事の質を高めたいと思いました。


2015年4月8日水曜日

614.「雑談の達人 〜初対面でも100%うちとける会話の心得〜」 内藤 誼人

この本を読んで、ビジネスにとって重要なのは、知識より雑談のように思えてきました。

なぜなら、自分ではお金を作り出すことはできず、仕事やお金を運んできてくれるのは、必ず他人だからです。

その他人といい関係を創ることが仕事やお金の流れを自分に呼びこむ重要なルートです。

本書は、そのよい人間関係を創る「雑談」のノウハウを教えてくれます。ネタの仕入れ方、本音の付き合い方、ウケる雑談のネタなどが分かります。

この本を参考にして、雑談力を高めたいと思いました。



2015年4月7日火曜日

613.「頭に来てもアホとは戦うな! 人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法」 田村耕太郎

「人間関係を思い通りにし、最高のパフォーマンスを実現する方法」は、言い過ぎです。そこまでのノウハウはありません。

嫌いな人でも争わず我慢し、権力者には取り入るといのが主な主張と感じました。著者が政治の世界に身を置くことで学んだ組織内政治の処世術です。

飲み会の効用やネットを見ずに自分と向き合う効用には同意できました。


2015年4月6日月曜日

612.「夢もお金も手に入れる人のシンプルな習慣」 井上 裕之

目新しい内容はあまりありませんが、本の売り出し方がとてもうまいと思いました。

とても一般的だけど興味を引くタイトルと、1つの見開きに1つのテーマを置くという読みやすさ。協調したい部分は太字にラインを引いてあります。

その内容はどこかで聞いたことがあるものばかりですが、弱い読者にどこまでも優しく、耳触りのいいものです。

心が弱っている人に暖かい本です。


2015年4月3日金曜日

611.「機龍警察 自爆条項〈上〉 」月村了衛,

機龍警察シリーズの第2作。第33回日本SF大賞受賞作です。

本編は、日本警察に雇われた3人の傭兵のうち、元テロリストのライザ・ラードナー警部の物語です。上巻では、彼女がなぜ北アイルランドのテロ組織IRFのテロリストとなったのか、アイルランドの歴史や政治、テロ組織の成り立ちや、マクブレイド家に対する裏切り者の烙印の真実を絡めて語られます。

IRFによる、日本滞在中のイギリス高官暗殺計画を軸、警察内での特捜と捜一の対立、外務省、経済産業省の思惑、そして、中国黒社会の暗躍が混ざり合ったスケールの大きな話となっています。

上巻は、丁寧にこういった背景を語っていくので、龍騎兵の戦闘シーンは最後に少しあるだけですが、下巻でスピード感ある戦闘が繰り広げられる期待感があります。


2015年4月2日木曜日

610.「富者の遺言」 泉正人

英資は事業に失敗し、無一文で広場のベンチに座っていました。

10円足りずに飲み物を買えずにいると、一人の老人が10円を貸してくれ、それをキッカケに2人は話を始めます。

お金、事業、家族と話は続き、英資はそれぞれについて、自分の過去を振り返ります。

  • お金で間違いを冒すのは、タイミングと選択を間違えるから
  • お金というのは、その人にとって扱える上限と下限がある
  • お金を取り扱う能力は、扱う経験を増やすことでしか上がらない
  • お金は人を映す鏡
  • お金は信用が姿を変えたもの

なかなか示唆深い話で、勉強になりました。



2015年4月1日水曜日

609.「中国との貿易をやめても、まったく日本は困らない!──中国経済の真実」 三橋貴明

中国は巨大な市場だから乗り遅れるなという声もあります。

しかし、実際には、人口は多くても日本製品を買える人の割合は少ないのではないでしょうか。

これから、中間層が育つからまだまだ成長すると思うかもしれませんが、中間層はまだありません。富裕層か貧困層です。

貧困層を中間層にするには賃金を上げる必要がありますが、そうすると低賃金という最大の魅力が失われ、周辺の他国に資本が逃げていきます。

また、農民は簡単には都市部に移転して都市部で労働することもできないため、貧困のまま留め置かれます。

富裕層は日本製品を中国では買わず日本へ来て買うというのがステータスです。そうなると最早中国で生産する魅力も必要もありません。

2013年度の中国への輸出額は、GDPの2.7%。中国からの輸入額は、GDPの3.1%。そうなると、日本は中国に対し0.4%の貿易赤字です。日本は思った程、中国に依存しておらず、個別の事情はあるでしょうが、全体としては、このGDPが減ったとしても殆ど影響はないでしょう。

中国からの主たる輸入品は食料品ですが、汚染された水、汚れた大気、禁止農薬で作られた食品は国産品に切り替えたほうが、内需拡大や食の安全の観点から利益が多いように思えました。