2016年2月29日月曜日

868.「海に降る」 朱野 帰子

深雪は幼い頃から、大好きな技術者の父から、深海の神秘的な話を聞いて育ちます。しかし、父は研究に没頭するあまり家庭を顧みず、アメリカに渡ったまま母と離婚します。

深雪は、父との絆を求めるように、父が開発に携わった「しんかい6500」のパイロットを目指します。パイロット昇格直前に、義理の弟である陽生が現れ、父との絆への信頼が揺らいだ深雪は、閉所恐怖症を発症し、パイロットの道に挫折します。

深海の話に興味がなかったのですが、作品中の子供に深海の魅力を伝えるという設定から、読者にも深海について、分かりやすく説明されます。

困難が割りと簡単にクリアされてしまうのですが、テンポよく読めて、未知の深海の世界も楽しまました。

2016年2月28日日曜日

867.「お金をかけずに老後を楽しむ 贅沢な節約生活」 保坂 隆

「老後資金は、◯◯円必要」という話しをよく聞きますが、減る一方では、いくらあっても不安は募るばかりでしょう。そこで、発想を転換して、「お金をかけないことで、楽しく健康長寿を実現しよう」というのが、本書の提案です。

健康維持は高いお金をかけるのではなく、基本は散歩。ショッピングセンターなどを歩くことで、冷暖房完備の施設で天候に左右されず、流行に触れながら運動ができます。さらには、スクワットは片足立ちで、筋力を強化します。

娯楽は、1万円以下で行ける日帰りバスツアーや、1日中どこまでもいける青春18切符。その他、様々な工夫が紹介されています。

まだ、老後ではなくても、デフレ下で可処分所得は多くない人にとり、手軽に楽しめて、運動できる方法が書かれていて、参考になります。

2016年2月27日土曜日

866.「部屋 上・インサイド」 エマ・ドナヒュー、 土屋 京子

ジャックは5歳。ママと2人で小さな部屋に住んでいます。部屋の外に出たことはありません。部屋には天窓がありますが、窓がありません。ドアは鍵がかかっていて開きません。

食料は週に一度、オールド・ニックが持ってきます。ジャックはオールド・ニックに見られないよう、夜は洋服ダンスの中で寝ています。オールド・ニックは、夜に部屋にやってきて、ベッドをギシギシさせて帰っていきます。

ジャックは一日中、ママと話し、本を読み、ゲームをし、運動して、テレビを見ています。

何だか奇妙なジャックの日常。。。

実は、ママは19歳の時、オールド・ニックに拉致され、納屋に監禁され、陵辱されて、ジャックを出産したのでした。そして、5年に渡りジャックを部屋の中で育て、様々な工夫で教育し、体を動かさせて来たのです。

果たして、ママとジャックはこの部屋から抜け出すことができるのでしょうか。

この話は、モデルとなった事件があるそうです。この小説も映画化されました。

2016年2月26日金曜日

865.「B級グルメ地域No.1パワーブランド戦略」 ラッキーピエロ社長 王 一郎

ラッキーピエロは、函館だけにしかないが、函館では一番人気のハンバーガー屋さんです。
本書の著者は、ラッキーピエロの社長である王さんです。

ハンバーガーは、すでにいくつものチェーン店がしのぎを削っていますが、低価格・広範囲にせず、高価格・狭域路線で、原価率をあげて、地域の材料を使い、独特な商品を作り、地域社会に貢献することで、根強いファンを作っています。

また、団員となりリピートすることで、地位が上がっていくという仕組みもあり、新商品の試食などの特典もあります。

最初の商品も、中華料理店を経営していた王社長が考えた、「チャイニーズチキンバーガー」って、ハンバーガーじゃないじゃんと思うのですが、とても人気があるようです。なぜか、カレーライスも売っています。

お店の作りも1店ずつ異なるようで、今や函館の観光名物となっているそうです。

中小企業の戦略策定のヒントが豊富に含まれていると思います。




2016年2月25日木曜日

864.「一流ビジネスマンは誰でも知っている ヒットの原理」 高杉 康成

「ヒットの原理」と謳っていますが、著者の仮説にすぎないと感じました。

そして、その仮説も、成功している事業について、成功した理由を後付で付けているので、因果関係が不明確です。

したがって、仮説に対する検証がないように思います。そのため、これらの原理に再現性があるのかどうか、不明でした。

ビジネスモデルを知るという観点からは面白い本だと思います。

2016年2月24日水曜日

863.「文庫版 小説 土佐堀川 広岡浅子の生涯 」 古川智映子

連続テレビ小説「あさが来た」の原作です。
登場人物やストーリーがかなり異なります。

大人気の五代友厚は数行しか登場しません。温かく支援してくれた養父は、嫁いですぐに亡くなっています。鉱山を爆破したさとしの話は全くありません。

だいぶ話が膨らんでいるし、山となる話が勝手に作られており、ドラマにするっていうことはこういうことなんだと思いました。

モデルは同じでも、別の話として読んだ方がよいです。

本書については、浅子というそれまで知られていなかった人物にスポットをあて、決して多いとは言えない資料を基によく人物像を作り上げたと感じます。名も無き個人が大きな事業を育て上げる経緯がよく描かれています。

また、江戸、明治、大正にかけての女性教育、社会進出、自立もよく理解できます。

2016年2月23日火曜日

862.「そうだ難民しよう! はすみとしこの世界」 はすみとしこ

様々なタブーに明るいイラストで切り込んだ著作です。

もちろん、難民を救済すべきであることは言うまでもありません。

そういった制度を悪用して、本来、救済が必要ないのにも関わらず、利益を得てしまうと、本当に救済が必要な人に手が差し伸べられなくなってしまいます。

在日特権についても、あまりよく知りませんでした。
大東亜戦争中に強制的に収容された朝鮮人について、生活面などで補償する制度です。本書の説明によれば、強制的に収容された人数以上に在日特権が与えられているということです。このことはタブーとされており、あまり議論されていません。

本書はこういった多くのタブーを公表したために、様々な批判にされされています。

私は、タブーを明らかにしたことに意義があると思います。そして、反論する場合は、「可哀想」などの感情論ではなく、根拠たる証拠をもって行うべきと思います。



2016年2月22日月曜日

861.「傷口から人生。 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」小野美由紀

著者の半生記です。完璧主義の母に理想を押し付けられて、壊れていきます。中学時代に不登校となり、リストカットを繰り返して、精神科へ。

高校時代は、自分が使用した生理用品を売却して小遣い稼ぎ。

第三志望の大学に進み、自信のなさから男性との性行為に救いを求め、サークルに入るが、処女喪失を果たせず、六本木のキャバクラでバイトを始めます。

一流大学、TOEIC950点、インターンとの華々しい肩書を持って就活を始めたものの、ストレスからパニック障害を発症し、就職を断念。

スペイン巡礼で様々な国の人と触れ合うことで多様な価値観、職業観を知ります。

しかし、帰国しても定職につけず、シェアハウスで引きこもります。ブログをキッカケに編集者の目に止まり、作家としてデビュー、本作がデビュー作です。

母との関係が子供の人格を作ることがよく分かります。母から褒められることを望むものの、完璧主義の母は、欠点のみあげつらい、それに応えようとすることで優等生になったものの、いつも不安に苛まれて、いつしか精神が破綻してしまいました。

自分が親の目を基にして、責任を親に押し付けていたが本当は自分に問題があったことに気付いた時に自立があります。しかし、だからといって、完治したわけではなく、皆、不安をかかえたモラトリアムとして生きているのでしょうか。

2016年2月21日日曜日

860.「ものの見方検定――「最悪」は0.1秒で「最高」にできる!」 ひすい こたろう

自分が気に食わないと思うことの見方を変えると、実はその出来事は素晴らしいことだと思えるようです。

例えば、自分のことを批判ばかりする、辛口に妻に対しては、褒められることと貶されることの数は同じという前提で考えると、
「仕事で褒められることが多いのは、妻がたった一人で全力で僕のことを貶してくれているからだ。」
と考えると、感謝の気持ちが湧いてきます。

さらに、妻のことを「隣のおばさん」と考えてみると、
「隣のおばさんが、毎日料理をつくりにきてくれている。」
と思え、感謝せざるを得ません。

自分自身、いろいろなものの見方を作ることで、毎日の幸せが増えるように思えました。

2016年2月20日土曜日

859.「ワタミ・渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター 」 中村 淳彦

本書に書かれている内容を読みますと、ワタミは新興カルト教団のように感じられます。

「地球上で一番たくさんの”ありがとう”を集めるグループになろう」とのスローガンのもと、
「24時間死ぬまで働け」という行動指針で、仕事、研修、渡邉氏の著作の読書、そして感想文に追い立てられます。

過労と睡眠不足のなか、教義に洗脳され、出来ない自分を責めるようになります。

入社6ヶ月で自殺した森さんの残業時間は141時間。これは正社員のなかでは少なかった方だそうです。

渡邉の思考は「新自由主義」だと書かれています。
規制緩和⇒民営化⇒価格競争という流れです。その結果は、⇒賃金カット、長時間労働となり、社員を追い詰めていきます。

著者は、渡邉氏が、居酒屋だけでなく、介護、仕出し弁当などに事業進出したことで、これらの業界にも悪影響を及ぼし、ブラック企業が増殖したといいます。

そこまでの影響力があったかどうかは分かりませんが、ワタミグループで働くことは非常に厳しいことが分かりました。

2016年2月19日金曜日

858.「平和なき時代の世界地図 戦争と革命と暴力」 佐藤 優、 宮崎 学

日本における、共産党の歴史や、行われてきたことが分かりました。その抗争や殺戮から、平和を愛する政党だとはとても思えませんでした。

また、ロシア革命、国際コミンテルン、ソビエト連邦の経緯もよく分かりました。

そして、今、ISもこの流れで、巨大化し、本当の国家となる危険性も否定できません。

中東で、イランが核開発に成功する日が近く、そうなるとサウジがこれに対抗してパキスタンから核兵器を購入することが起こりえます。その場合、同じスンニ派であるISがサウジの核兵器を乗っ取るという最悪のシナリオもありそうです。

2016年2月18日木曜日

857.「リカ」五十嵐 貴久

42歳の会社員、本間は印刷会社の副部長です。
特に業績を上げたわけでもなく、問題も起こさず、無難に勤務してきました。

大学時代の友人の坂井から、出会い系サイトを紹介され、はじめは乗り気でなかったものの、営業と共通点を見つけて、徐々にのめり込んでいきます。

数人と肉体関係を持った後、リカという女性とやり取りが始まります。リカは控えめで親しみやすく、可愛いため、本間はだんだん直接会いたくなります。そして、自分の携帯電話の番号を教えたことから、リカの態度が急変して・・・

リカにタクシーが追いかけられるシーンや、自宅への嫌がらせなど、ゾッとするシーンの連続です。

そして、最後のシーンのおぞましさは、想像を超えています。

2016年2月17日水曜日

856.「引き算する勇気 ―会社を強くする逆転発想」 岩崎 邦彦

機能、商品、事業を絞れば、魅力が増して売上が上がるという内容です。

機能を絞れば魅力が上がるというのは、色々な料理がある食堂よりもラーメン専門店の方がラーメンが美味しそうに感じるという点で、一理あるかもしれません。

しかし、商品を絞ったコンビニ、100円ショップ、ドン・キホーテは単なる雑貨店となり、魅力を失うのではないでしょうか。

引き算の好例としてCoCo壱番屋は最初は喫茶店だったが、カレーが人気だったのでカレーに絞って大成功したと云います。しかし、最初に喫茶店にカレーを足し算したから、カレーに人気が出たはずです。

思うに、中小零細企業は何がヒットするかわからないので、まず足し算してみて成功したのだけ残すという試行錯誤があるのではないでしょうか。引き算できるものが足されていなければ、そもそも引き算できません。

独自のアンケート結果で主張を裏付けしていますが、2つの質問に著者が主張する回答を応えて、両方とも「好業績である」となるパーセンテージが低すぎて、根拠にならないと思いました。

まず、著者の仮説があって、それを裏付ける事例を調査結果が作為的に付されているようで、この仮説をそのまま信じることが難しいと思いました。

2016年2月16日火曜日

855.「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」 真梨幸子

下山健太は5人を殺害した容疑で逮捕され起訴されたものの、一審で無罪となります。

事件は、過疎化が進む団地の一室に女性を監禁し、暴行、陵辱の末、助けに来た両親などを殺害した残忍なものでした。

健太の母、茂子がインタビューに応じるということで雑誌社の3名が、事件のあった団地へ向かいます。

茂子は未解決事件である一家惨殺事件で亡くなった慶子の妹であり、15人の連続殺人事件で死刑になったフジコの叔母でした。

そして、フジコと健太は幼いころ、一緒に暮らしていたのでした。

「殺人鬼フジコの衝動」、「私はフジコ」に連なる完結編です。
一家惨殺事件の犯人とフジコ誕生の秘密に驚愕しました。

2016年2月15日月曜日

854.「あなたの知識をお金に換えて副業講師で月10万円稼ぐ!」 西條 由貴男、 アンディ中村

仕事などで得た知識を体系化し、本業の傍ら副業でセミナーを開いて、月に10万円を稼ぎましょうという本です。

いきなり会社を辞めて、独立して講師を始めるのは、収入面で危険があります。

そのため、会社に勤務しているうちに、人脈や実績を作っておいて、独立した方が、仕事を軌道に載せるまでに期間を短縮できるというものです。

さらには、副業のうちに、本業の収入を超えてしまえば、非常にスムーズに移行できます。

セミナー講師を全くやったことがない人に、副業として気軽に講師をやってみることを勧める入門本です。

2016年2月14日日曜日

853.「なぜISIS(イスラム国)は平気で人を殺せるのか ~“アメリカの無策”と“サウジ・イラン代理戦争”の代償~」 ベンジャミン・ホール

ISISの統治下は、原始時代に最新兵器と現代のインフラが持ち込まれた最悪の環境です。

時代が完全に逆行し、古代社会の規範のなかで暮らしています。法も良心も政治もありません。

食うこと、殺すこと、奪うこと、犯すことという本能のみが行動原理です。

異教徒は奴隷とされ、女性は当然のごとく犯されます。

それらの行為を正当化するためにイスラム教が持ちだされますが、都合のいいように解釈し、本来の教義を曲解しています。

スンニ派とシーア派の宗教戦争のように捉えられていますが、本当はサウジアラビアとイランの戦争であり、シリアのアサド大統領が混乱に拍車をかけています。

ISIS内で子供たちが洗脳教育を受けており、一刻も早くISISの支配を終わらせないと、教育を受けた世代が増加し、中東以外に拡散して争いが拡大するおそれがあります。

2016年2月13日土曜日

852.「風俗で働いたら人生変わったwww」 水嶋 かおりん

著者は、父から虐待を受けながら貧しい家庭で育ちます。

8歳で同級生の兄から性的いたずらを受け、
11歳でストーリーキングに会い、
14歳で40代の小児性愛者に強姦され、処女を失います。

そして、15歳で初めて援助交際をし、風俗の世界に入りました。

大変悲惨な生い立ちです。しかし、著者は風俗の世界に入ったことでこのトラウマから開放されたといいます。

多くの好きでもない男性と関係を持つことで、一つのシミは薄まるかもしれません。ただ、それがつらい記憶からの解放なのか、悲劇に無感覚になったのか、分かりませんでした。

文章が論文調で著者の頭の良さが分かる反面、自分の生き方に対する反動も感じられました。

色々と考える事の多い本でした。

2016年2月12日金曜日

851.「リバース」 湊 かなえ

ゼミの仲間で行った旅行先で、広沢が運転していた車が崖から転落し、広沢は死亡します。

3年後、旅行に行ったメンバー4人の周囲にそれぞれ、「◯◯は、人殺しだ」と名指しの手紙が届きます。

メンバーの一人、深瀬は、広沢の過去にさかのぼり広沢を深く知ることで、手紙の犯人を見つけようとします。深瀬は、広沢を知ることで、自分と広沢との関係や、自分自身の人間関係について深く洞察していきます。

手紙の犯人は割りと簡単に分かってしまうため、この小説は犯人探しではなく、人間の心情を味わう小説だなと思いました。そして、著者らしくはないものの、こういう小説もいいかなと感じました。

ところが、最後の一行でとんでもない謎が解き明かされ、やはり、著者らしいミステリーだったと気づきます。

「広沢の死の真実を知ってしまった深瀬は、この後どうするのだろう」と、想像するだけで恐ろしくなります。

2016年2月11日木曜日

850.「大班 世界最大のマフィア・中国共産党を手玉にとった日本人」 加藤 鉱

日本の部品メーカーの中国工場の董事長である千住樹が、中国で幇を気づき、大班として成功するまでの波乱万丈の人生を描きます。

千住自身が日本に生まれ、いかにして生き馬の目を抜く中国で仕事を成功させる人材となっていったかが体感できます。

また、中国がいかにして社会主義市場経済を拡大させた、そして誰が得をしていったのか、その表と裏の実体にも触れます。

中国人と一括りにできない、地域ごとの民族性、どこまでもはびこり、決して無くなることのない賄賂、法律や契約では裁くことができない人間関係がよく描かれています。

この本を読むと、日本人として育った人間が、中国でビジネスを成功させることがいかに困難か、どれだけの日本人が赤子の手をひねるように金を巻き上げられたか、よく分かります。

中国がもはや、世界の工場でなくなった現在、工業化を急いだために自然が破壊され、急速に進んだ砂漠化が、この国を追い込み、死滅させることを予言しています。

2016年2月10日水曜日

849.「400円のマグカップで4000万円のモノを売る方法―――「儲けの仕組み」が、簡単にわかる!」 髙井 洋子

洋介は、東京タワーの近くに喫茶店を営んでいますが、2年経っても赤字続きです。妻子には逃げられ、一人で朝から晩まで働き続けています。

桜子は、経営コンサルティング会社の社長です。深夜にそこしか開いていなかった洋介の喫茶店にたまたま入りました。名物の「スープカレー」を食べて気に入ってしまい、このままこの店が潰れてしまうのは惜しいと思うようになります。

そして桜子は洋介にあれこれレクチャーするようになり、洋介は熱心にこれを学んで店のあり方を変えていこうとします。

ビジネスモデルをテーマにしたビジネス小説です。「俺のイタリアン」や「ラッキーピエロ」などのビジネスモデルを例に引きながら、儲かる仕組みとは何かを学んでいきます。

洋介には、奥芝洋介さんという実在するモデルがおり、お店も実際にあるそうです。行ってみたいです。

2016年2月9日火曜日

848.「ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学」 入山 章栄


なぜ、ビジネススクールで最先端の経営学が学べないかといえば、それが一般の人の目に触れる機会がないからのようです。

経済学の教授は、簡単に分類すると
1. 研究者
2. 教育者
3. 著作者
に分かれます。

研究者が最先端の経営学を生み出しますが、彼らはそれを論文にしか発表せず、書籍化しません。
著作者が書籍や教科書を出版しますが、彼らは最先端の経学を研究していません。
教育者がMBAなどで生徒を教えますが、彼らの使うテキストは著作者が書いており、最先端の経営学ではあります。

こういうカラクリで、未だに1980年に発表されたポーターのSCP戦略や、1990年に発表されたバーニーのRBV戦略がMBAの授業の主軸になっているそうです。

では、ビジネススクールに行っても意味がないかといえば、
1. 現場で活躍しているゲストスピーカーの話と、
2. ビジネススクールで得られる人脈
には、価値があるとのことでした。

本書で解説される経営学は、現代の企業経営を理解するために非常に参考になるものでした。

2016年2月8日月曜日

847.「会社に勤めながら資産をつくる「不動産投資」入門」 志村 義明

不動産投資について、不足なく説明されている好著です。

入門とありますが、すでに投資用不動産を保有している人にも参考になると思います。

著者が最悪の投資と考えているのが、「新築ワンルームマンション」です。利回りが低く、価格が高いからです。その原因は、物件価格の3~4割がデベロッパーや販社の利益となっているからです。

そして、さらに悪いのが、家賃保証との組合せ。新築のときは苦労せず入居者が見つかるのに保証会社に手数料を払う。数年立って入居者が入りにくくなると家賃を引き下げられるからです。

正にその通りで、私はこの組合せで大失敗しました。

購入時に「近くにT社の工場があるから入居者に困らない」との話は、T社工場の撤退で単なる田舎にあるワンルームマンションとなり、資産価値も大幅減でした。
家賃保証契約を一方的に解約され、客付けに大苦戦。

著者が勧めるのは、中古RCマンション投資で、なかなか勉強になりました。

2016年2月7日日曜日

846.「中国 狂乱の「歓楽街」」 富坂 聰


タイトルは物々しいですが、内容は取り立てて驚く程のものは書かれていません。

”性都”と呼ばれた東莞が2014年2月に公安の一斉検挙を受け壊滅した話。
アンチエイジングに根ざした母乳ビジネスの話。
学費に困った女子大生の売春の話。

著者は中国の事情に詳しく、現地取材も行っているようですが、本書の内容については、一次情報に当たれておらず、又聞きです。

そのため、深く切り込んだ取材とならず、少し薄い内容となっています。

2016年2月6日土曜日

845.「私は、フジコ 」 真梨幸子

「殺人鬼フジコの衝動」と「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」の2つの作品をつなぐ短編です。

話自体は、「殺人鬼フジコの衝動」と直接的な関連はありません。

元アイドルの小川ルミがやっと主役を射止めた作品が、過去の犯罪を映像化した再現ドラマの「殺人鬼フジコ」。フジコが乗り移ったかのような熱演で、これで女優としてブレークするかと思われたのですが・・・

残虐の連鎖、成り行きの性行為、新興宗教が関わりあい、「インタビュー・イン・セル 殺人鬼フジコの真実」へと導いています。

2016年2月5日金曜日

844.「殺人鬼フジコの衝動」 真梨幸子

400ページの長編ですが、長いと感じること無く一気に読めました。

両親と妹を惨殺され、一人だけ生き残った11歳の少女フジコ。
彼女がいかにして殺人を繰り返し、殺人鬼として成長していったかが描かれます。

始めは、偶然の殺人から後に意図的な殺人へと変化していく。

果たしてフジコが殺人鬼となっていったのは、偶然なのか、それとも必然なのか。

作品全体を構成する、大きなトリックに予想が大きく覆されます。

そして、最後の1ページに秘められた衝撃とは・・・

2016年2月4日木曜日

843.「二代目になると、自分で決めて生まれてきました」 小澤勝也

著者は折り箱メーカーの二代目社長です。
26歳で父親の会社に入社し、専務として経営を担当しました。戦う姿勢で周囲に対峙したことが災いし、社内で孤立し、売上がピーク時の半分となり、倒産の危機に瀕します。

そこで、社員全員にそれまでの対応を詫び、助けを求めて、愛の姿勢に転換してから、業績が回復し始めます。

今では、現場は社員に任せ、自分は勉強と講演のために全国を飛び回っているそうです。

著者の考え方は斎藤一人さんに似ており、「そうだよね。わかるよ。」や天国言葉など、一人さんの教えが文中の随所に見られます。

書かれている内容は素晴らしいですが、なかなか実践するのは難しそうです。著者も一夜にしてこうなれたのではなく、少しずつ自分を変えていったのではないでしょうか。

会社は株主のものではなく、そこで働く従業員のものという考え方は、日本的で成功する秘訣かもしれません。

2016年2月3日水曜日

842.「できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !」 船瀬 俊介

著者は、少食で三食よりも、一日一食を薦めています。腹七分目では、血糖値が一日中保たれるからです。

一方、一日一食では、血糖値が上がらないため空腹感を感じますが、この空腹感こそが大切だそうです。胃を完全に空にして休ませることができるからです。

ただし、「絶対に食べてはいけない」とガチガチに考える必要はありません。友達と愉快にテーブルを囲むときは、美味しく食べて、翌日、ファスティングすれば、すっきり元に戻るそうです。

自分でも、一日一食を試してみましたが、翌日に起きた時に非常にスッキリとした感覚があります。そして、体重もどんどん落ちていくようです。

毎日とは言わず、週に何日かは一日一食で行こうと思います。

2016年2月2日火曜日

841.「俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方」 坂本 孝

著者の坂本さんは、「俺のイタリアン」などを経営する俺の株式会社の社長です。
ブック・オフを50歳で創業し、会長を退任後、69歳の時に俺のイタリアンを開店しました。
これまでに13の事業を起こし、3勝10敗だそうです。

俺のイタリアンのコンセプトは、開業当時、不景気にも関わらず繁盛していた、立ち飲み居酒屋と、ミシュランの星付きレストランを合体させたものだそうです。単純だけどなかなか思いつかないアイデアです。

高級レストランの原価率は平均18%ですが、「俺の・・・」はよい材料を使い原価率を60%としています。これでは儲からないのでは?と思いますが、かなり利益を上げています。
その秘密は「回転率」。
高級レストランが0.75位しか顧客が回転しないのに対し、「俺の・・・」では4回転もさせることで驚くほど儲かるそうです。

さらに、「俺の・・・」には、一流レストランで働いていた料理人が沢山います。それは、自由に腕を振るえることはもちろん、著者が稲盛和夫さんの「盛和塾」で学んだ「利他の心」に社員が心酔しているからではないでしょうか。

グローバル化で企業が社員の給与を削り、非正規雇用で流動化を進める中、給与を上げて社員を大切にすることで、業績を急拡大させている俺の株式会社は、デフレ打開のモデル企業となれるのではないでしょうか。

2016年2月1日月曜日

840.「探偵の探偵IV 」 松岡圭祐

探偵の探偵シリーズ第4弾。2015年にドラマ化して1~3作の続編にして、「死神シリーズ」の完結編です。
前作の衝撃的な出来事から、玲奈はスマ・リサーチ社を退社し、竹内探偵事務所へ転職するが、抜け殻のような日々を送る。

玲奈を傷つけた琴葉は、それを償うかのように自分を追い詰め、危険な方向へと道を進める。

そんなある日、完全密室である東京拘置所の独居房で連続殺人事件が発生する。ビデオには、琴葉の姿が録画され、残されたメモには琴葉の筆跡で次の殺人予告が・・・

妹の咲良の避難場所をストーカーに教えた「死神」市村凜。その凜を育て上げた師を巡る、ハードボイルドです。