2016年5月31日火曜日

934.「青空チェリー 」 豊島 ミホ

表題作が第1回「第1回R-18文学賞・読者賞受賞」受賞作です。

そのままでは分量が少なく出版できないため、短編1編と中編1編が書き下ろされています。

エッチな話で関心を引きますが、それだけであり、問いかけてくるものはありませんでした。

デビュー作ということもあり、内容には厚みが欠けています。

気晴らし、時間潰しにはいいかもしれません。

2016年5月30日月曜日

933.「あやしい投資話に乗ってみた」 藤原 久敏

著者はファイナンシャルプランナーです。著者自身が実際に試してみたあやしい投資話のレポートになります。

試してみた怪しい投資話は次のとおりです。
  1. 未公開株
  2. 新規公開株
  3. 和牛オーナー
  4. 海外ファンド
  5. 超高金利の銀行
  6. FX
  7. 先物取引
結局、確実に儲けられたのは、新規公開株だけでした。

こういった儲け話に乗ってみたいと思う反面、自分の労働と関係なく、社会にも貢献しな利益が自分にどういう意味があるのか考えてしまいました。

利益が上がれば喜び、損失が生じると不安になると、日常生活がいつも気が気でなくなるような気がします。

投資話があやしいかどうかは、自分自身に経済知識があるか、手間をかけて情報収集する根気があるか、おかしな点に気づいて質問できるかにかかっていると思いました。

2016年5月27日金曜日

932.「漁港の肉子ちゃん」 西 加奈子

頭が良くなく、人を疑うことを知らないため、いつも男に騙される肉子ちゃん。

それでも、いつも元気で明るい。

とっても太っていて醜く、最初はうっとおしいけれども、付き合っていくうちに、心地よくなり、周囲から人が絶えない。

そんな肉子ちゃんに全く似ていない、娘のキクりんから見た、にくこちゃんの日常です。肉子ちゃんと漁港の人達とのふれ合いがやさしく描かれています。

人は生きるために、勉強したり、顔色を伺ったり、損得を計算したり、騙したりするけれど、肉子ちゃんは、全く正反対な生き方をしています。

そんな生き方をしていても、その無邪気を愛してくれる人達がいて、幸せに暮らしていける人生もあるのだなと思いました。


2016年5月26日木曜日

931.「大きらいなやつがいる君のためのリベンジマニュアル」 豊島 ミホ

スクール・カーストが実際にあることを知りました。

それは直接のいじめでない分、本人から助けを求めることがさらに難しいようです。

そして、それは全体の空気であるため、本人が変わっても、状況は変わりにくいです。

著者がスクール・カーストで失ってしまったものは「自信」でした。生々しくも痛々しい半生記です。子供向けの自己啓発本とは言えないと思いました。

その後、著者は、大学生の時に、「R-18文芸賞」を受賞して作家としてデビューします。
しかし、新しい出会いものなく、家とコンビニを往復するだけの、単調な生活に陥ります。

紆余曲折を経て、スクール・カーストのトラウマから逃れるのですが、その心境は「自分は自分、他人は他人」という割り切りではないでしょうか。

結局、最高のリベンジは、「自分が幸せになること」だと思いました。

2016年5月25日水曜日

930.「えんじ色心中」 真梨 幸子 講談社

著者の熱意が非常に感じられる作品でした。

ただ、話の柱が多くなったため情報過多になり、混乱してしまいました。

面白くは読めたのですが、ネタが多すぎて話にまとまりがないように感じました。

物語も、途中で少し中だるみした感があります。

しかし、意欲作であることは間違いはありません。

本作では、読者に伝えたいことが中心に書かれていますが、その後の作品は読者がどう感じるのかという読者感情をコントロールすることを中心に書かれているように感じました。


2016年5月24日火曜日

929.「パリ行ったことないの」 山内マリコ

気軽に読める短編集です。

日本で生まれ育ち、日本の閉塞感に倦んだ人達が主人公です。

12作中、11作目までは、「フィガロ・ジャポン」で連載されていたとのことで、軽いタッチのパリに憧れる話です。肩が凝らないのですが、読後にあまり残らない・・・

しかし、書き下ろしの12作目でこれらの話がまとまりを見せ、それまでの話に深みが出ます。

日本では社会にうまく対応できなかった人達が、南仏の風土に触れ、もっとゆったりと生きてもいいんだと気づいて解放される、再生の物語です。



2016年5月23日月曜日

928.「orange【オレンジ】(3)」 高野 苺、 時海 結以

映画化されたコミックス『orange』の小説版の最終巻です。

10年後から届いた手紙にかかれていた、翔(かける)が自殺した2月15日が近づいてきます。

菜穂は、翔の運命を変えることが出来るのか?

翔がいなくなった世界で、菜穂と一緒になるはずだった須和。須和が選んだ行動は?

恋愛と友情の狭間で、親への愛情や自分の人生に向き合っていく姿が心を動かします。

本編の他に、別の設定の話と、10年後の話も掲載されており、色々と思うことが多いです。

原作が少女漫画で、かつ、ジュニア文庫ということもあり、侮っていましたが、なかなか良い作品です。

2016年5月20日金曜日

927.「困難を乗りこえる 強い自分のつくり方」 石橋 真

著者はリクルート社でマネジャーを歴任後、社員教育の会社を創業します。

創業から8年後に創業メンバーだった役員から社長を解任され、一転して無職に。

そこから再度、人材教育会社を立ち上げ、現在では、解任された会社を売上でも従業員数でも上回るまでに育て上げました。

本書はその血を吐くような体験から結実した人生訓です。

本書は様々な読み方ができると感じました。

  • 新入社員から3年目位までは、仕事のやり方や実力の付け方
  • 中堅社員には、リーダーシップの発揮の仕方や後輩育成
  • 管理職には、グループの風土作りやNo.2の育て方
  • 経営者には、社員との向き合い方や孤独への対処法

書かれているすべてが実体験であり、生の言葉に迫力があります。

成功よりも失敗を赤裸々に語り、読者に机上の空論ではなく現実を突き付けます。

自分の体験から、失敗を乗り越えた方法論を言語化し、読者にも真似できるようになっています。

リクルートでトップ営業マン、優秀なマネージャーとなり、起業したとなれば、順風満帆のビジネス人生と見えますが、成功の何十倍もの苦悩に満ちた日々。それらの苦難を乗り越えたところに、人間としての幅や凄みが生まれたのだと思います。

2016年5月19日木曜日

926.「なぜ中国人はこんなに残酷になれるのか -中国大虐殺史-」 石平 ビジネス社

ありもしない南京大虐殺を言い立てる共産党ですが、共産党自身が虐殺した人数は、20万人どころではありません。

「殺人から政権を起こし、殺人によって政権を固めてきた」のが、毛沢東共産党の実態です。

政権を樹立したプロセスは、現在、ISがやっていることと同じ。違いは、コミンテルンという後ろ盾があっただけです。

1921年 紅軍大粛清 1万人
1930年 AB団粛清 7万人
1946年 長春市民虐殺 33万人
1949年 土地改革運動 200万人
1951年 鎮反運動 71万人
1955年 粛反運動 8万人
1958年 大躍進運動 2000万人-4000万人
1966年 文化大革命 数百万人
1989年 天安門事件 数千人(有力説)

「農村社会には、正業につかずさまざまな悪事を企むことで食べていく「遊民」の層が常に存在している。こういう人々は普段なら社会から排斥される立場にあるが、天下大乱の時になると、往々にして反乱を起こす主力軍として活躍の舞台を得る。
したがって、王朝交代のたびに起きた「農民蜂起」や「農民反乱」の多くは、けっして一般農民が主体ではなく、「遊民」中核とする反乱である。」
王学泰 「遊民文化と中国社会」

この「遊民」という観点から中国の歴史を見ると、非常に納得が行きます。毛沢東たちの革命も「遊民反乱」で、それまでの主流社会に対する恨みと報復心から生まれる、極端な残忍さと暴虐さを有していたと言います。

ただ、毛沢東たちはレーニン主義的「暴力革命」の理論から暴虐と殺戮の大義名分を得ていたという解釈は得心が行きます。

現代では、民主主義国家を装う中国ですが、本質は「暴力装置」です。それは、「天安門事件」で証明されています。

現在でも、現体制に反対する「遊民」が存在しているかもしれません。そうすると、「農民反乱」が起こる可能性はあるかもしれません。

2016年5月18日水曜日

925.「みんな邪魔 (幻冬舎文庫)」 真梨 幸子

1976年に小中学生を中心に一大ブームを巻き起こした少女漫画「青い瞳のジャンヌ」。ところが、突然ショッキングな内容が掲載され、連載終了となってしまいます。

その後も、ファンの集まりは細々と継続しますが、ファンクラブの中枢に「青い六人組」が君臨するようになるとファンクラブが再度盛り上がりを見せます。

しかし、その「青い六人組」のメンバーも、DV、介護、詐欺、嫉妬、不快感、繰り返される悪夢により、次々と不審な死を遂げていき・・・

「青い六人組」のハンドルネームが読者の混乱を引き起こすのですが、それもトリックの一つのようです。

熱狂的なファンの世界の気持ち悪さと、中高年の性欲の醜さが後を引く小説です。

2016年5月17日火曜日

924.「orange【オレンジ】(2)」 時海 結以、 高野 苺

映画化されたコミックスの小説化です。

アイドル映画だろうと高をくくって、映画を見に行かなかったことを後悔しました。

とても青くさい内容なのですが、結構いい話で泣きそうになりました。

体育祭のリレーの話など、うまく行き過ぎるのですが、「良かった」と思ってしまいます。

甘ったるいのですが、心が動きます。

恥ずかしいですが、すごくいい話と認めざるを得ませんでした。

最終巻を読むのが待ち遠しくなります。

2016年5月16日月曜日

923.「ぼくは明日、昨日のきみとデートする 」 七月 隆文

タイトルの意味を知ったとき、その設定の面白さが分かりました。

これからも当然、続いていくと思っていたことが、実は最後であったことがとてもせつないと感じました。

前半は、ちょと不思議なラブ・ストーリー。でも、話がうますぎると感じました。しかし、その”うますぎる”に鍵がありました。

物語の設定がわかり、感情が移入されると、どんどんせつなさが増していきます。

読み終わった後、もう一度読み返してみたいと思う本です。

2016年5月13日金曜日

922.「光と影の法則 完全版」 心屋 仁之助

裕子は33歳の会社員。人一倍責任感が強いため主任を任されていました。

ところが新しい上司が赴任すると歯車が狂い始め、上司と対立することが多くなり、ついには降格されてしまいます。そんなとき、大きなトラブルが発生し・・・

一生懸命頑張っているのに周りから理解されず、かえって状況が悪化するといった、身近に起こりがちな問題を短いストーリーで語り明かします。読みやすくて分かりやすいです。

日常で起こり得る話なので、自然と引きこまれていきます。

光(成功)を追い求め、影(問題)を追いやると、やがて問題に向き合わざるをえないような事が身近に現れます。結局、光あるとことに必ず影があり、光が明るければ明るいほど、影が濃くなるからです。

そして、目の前の問題の根本原因は、子供の頃の親との関わり方にあるということが勉強になりました。






2016年5月12日木曜日

921.「行橋市議会議員 小坪しんや」 小坪 しんや

タイトル、表紙ともに選挙ポスターのようです。しかし、内容は自分の宣伝ではなく、保守派としての政治情勢に対する評論です。

著者は、行橋市の現市議会議員です。私は行橋市がどこにあるか知りませんでした。調べてみると福岡県でした。地方の市議会議員で、まだ若いのですが、国政に対する豊富な情報としっかりとして意見持っています。

かと言って、市政を蔑ろにしているといった風ではなく、国政を踏まえて、その中で市政でできることに熱心に取り組んでいるように感じられました。

こういった若い政治家がいることに驚くとともに、将来が期待できます。この問題意識を持ったまま、歪められずに活動を続けてほしいと思いました。

2016年5月11日水曜日

920.「orange【オレンジ】(1) 」 高野 苺、 時海 結以

映画化されたコミックスの小説編です。

菜穂が高校二年生に進級した始業式の朝、自宅の玄関で自分宛の手紙を見つけます。

差出人名は十年後の自分で、そこにはこれらか起こることが書かれていました。未来の自分からの願いは、「自分とは同じ後悔をしないでほしい。」

ラブ・ストーリーをSFが融合し、謎が気になりながらもときめくという面白い設定になっています。

長野県松本市の美しい情景を舞台に登場人物たちの素直さが伝わります。

2016年5月10日火曜日

919.「マキアヴェッリ語録」 塩野 七生

「わたしは、改めてくり返す。国家は、軍事力なしには存続不可能である、と。それどころか、最後を迎えざるをえなくなる、と。」

とても現実的な言葉が続きます。読みながら現在の情勢にも当てはまることばかりです。その理由は以下の言葉で表されます。

「過去や現在のことに想いをめぐらせる人は、たとえ国家や民族がちがっても、人間というものは同じような欲望に駆られ、同じような性向をもっていきてきたことがわかるであろう。」

軍備を持たなかったチベットやモンゴルを侵略した国は今後も拡張を目指し、事大主義で自分に有利だと思う方につく国はそれまでの同盟国を裏切るのでしょう。

「次の2つのことは、絶対に軽視してはならない。
第一は、忍耐と寛容をもってすれば、人間の敵意といえども溶解できるなどと、思ってはならない。
第二は、報酬や援助を与えれば、敵対関係すらも好転させうると、思ってはならない。」

巨額のODAを提供しても軍事費に転用し、反日デモが繰り返される。
8億ドルもの円借款を提供しても、慰安婦などの新しい理由で10億円も引き出される。
いくら払っても関係は良くなるどころか、もっともっとと要求されます。

「謙譲、美徳をもってすれば、相手の尊大さに勝てると信ずる者は、誤りを犯すはめにおちいる。」

繰り返し心に刻み、備える必要があると思いました。

2016年5月9日月曜日

918.「世界を威嚇する軍事大国・中国の正体」 凡司, 小原

人民解放軍について、非常に詳細に記載されています。

著者は自衛隊出身のため、自衛隊の内実にも詳しいです。

中国の増大する軍事費、拡大する人民解放軍、最新化する兵器などで周辺国に脅威が増しています。

しかし、現実の軍事力では米軍に対抗できないため、サイバー戦争や宇宙戦争に争いの主軸を置いているようです。

日本がサイバー戦争や宇宙戦争にどれほど備えているかは不明でした。

人民解放軍の強化されている部分にのみスポットが当てられていますが、権力闘争、兵士の腐敗による軍備の横流しなどで、実力は少し割り引かれるものと思われます。

それでも、日本がかなり軍備を増強しないかぎり、単独で中国に対抗することが困難であるので、米国と協力して中国にあたることが重要だと思いました。

2016年5月6日金曜日

917.「もうこれで英語に挫折しない――マッキンゼーで14年間活躍できた私は英語をどう身につけたか」 赤羽 雄二

本書の方法を試してもTOEICのスコアはあまり伸びませんが、TOEICハイスコアの人ができないビジネス会話ができるようになります。

今の日本は、日本語で仕事ができるというとても恵まれた状況です。そのため、日常で英語を使う必要性には迫られないこともあり、あまり英語が話せない人がほとんどです。かと言って、日本人全員が英語を喋れなければならないということはないと思えます。仕事で必要な人だけ話せればいいのです。

しかし、英語を使う必然性がないと英語の学習を続けることが困難であり、英会話学校などに通っても継続はできるものの、切羽詰まっていないので習得スピードはなかなか上がりません。

そこで本書では、英語で講演をする、外国人に日本語を教える、英語でブログを書くなど、色々な必然性の作り方を教えてくれます。本書に書かれた方法を実践すれば、仕事で英語を使うことができるようになりそうです。

とても実用的な内容で試す価値ありです。

2016年5月2日月曜日

916.「負け逃げ」 こざわ たまこ

田上は村に住む高校生。近所に住む幼なじみの美少女・野口に好意を寄せています。

野口は頭もよく、クラスの優等生グループに属しています。生まれつき右足に障害があり、びっこを引いています。

田上は、ある夜、野口が男とホテルから出てきたところを目撃します。その後、何度も。野口は次々と男に体を預けるヤリマンでした。

大型スーパーとラブホテルしかない、田舎の”村”。噂と陰口に満ちた村に住み、障害ゆえに村に縛られる少女と絶望。その絶望に自らの体を傷つけることで復讐することしかできない閉塞感。

村に縛られた人々は、村を捨てきれず、逃げることを諦めます。

著者の講演で聞いたのですが、「負け逃げ」は「勝ち逃げ」の対語として付けたとのこと。

負けて逃げても生きる道はあるという救いの道でしょうか。